本作は俳優の映画だろう。内部抗争の語りが必ずしも的を得ているとは云い難く、没落に突き進むチンピラという物語はありふれているが、長門裕之の好演が秀作に押し上げている。彼は死んだ方が幸せだったのだ、という感慨を抱かされる。

状況の切り取り方はとても優れている。長門の海際のバラックや冒頭の二段ベッドのパンパン屋など忘れ難い。６０年代日活の撮影美術の素晴らしさは本作に限ったことではないが、代表作として本作が選ばれている、という意味でなら大賛成。

豚は頭数が集めきれずクライマックスがショボくなったと云われているそうな。加藤武がとても良く、小沢昭一が控え目なのが面白い。丹波哲郎の描き方はちょっと取ってつけた感があり不満。ベストショットは横須賀駅でうんこ座りする菅井きんと武智豊子のツーショット。