コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 恋を知らない僕たちは(2024/日)

キスの映画。トップビリングの大西流星−エイジは、劇中3人とキスをする。続く窪塚愛流−直彦も2人とキスをする。しかし、口唇の接触までちゃんと映したショットは、それぞれ1人とだけ、というのは考えられた演出かも知れない。
ゑぎ

 また、ビリング3番目の齊藤なぎさ−小春がヒロインかと見る前は思っていたが、最後には良いポジションに落ち着くとは云え、全般に、齊藤は悪女役に近い引っ掻き回し役であり、4番目に名前の出る、いつもヒロインの友人役ばかりというイメージの莉子−泉が、実は純然たるヒロインだ。これはとても意外だった。プロローグが、中学生の大西−エイジと窪塚−直彦と莉子−泉の関係を描くもので(大西と莉子は幼馴染だが、窪塚が莉子に告白して付き合い始める)、この時点で莉子がはっきりとヒロインの位置づけだと分かるのだ。このプロローグに、齊藤−小春は登場しない。

 メインのプロットは皆高校生になってから。その導入部は、校舎の窓から外を見る大西をドローンで後退移動して、海の側に立つ校舎全体を映す大俯瞰ショット。これは目を瞠る処理だ。すぐに齊藤−小春が登場し、窪塚に一目惚れする。こゝにバンドのギター・ボーカル−猪狩蒼弥−太一、図書委員の志田彩良−池澤さんが加わって、これら6人が主要キャラ。本作は、ほゞこの6人だけでプロットを運ぶ。彼らの父母は全く出てこないし(家庭シーンがない)、学校の教職員も何らプロットに絡まない。なので余計なノイズ無く6人の関係の変化が描かれるのは良い点だと思う。大西と齊藤の共に素直じゃない性格付けは鬱陶しくも感じたけれど。

 上でキスに関して書いたが、それ以前に大西には、何かのアクシデントで(例えば、転倒するのを助けるなどで)女性と顔が急接近するという場面が実に4回ある(その流れでキスをするのは2回)。これは多くの観客がドキドキさせられるところだろう。私は6人の中では、やっぱり大西が一番の美形だと思いながら見た(大衆演劇の二枚目みたい)。もっとも、窪塚の落ち着きのある演技、猪狩の脇役としての存在感も良いと思った。あるいは莉子も齊藤なぎさもそれなりに愛らしい。彼女らに対して志田彩良だけが一人落着いたキャラ造型で、まるで昭和の女優みたいと思いながら見た。長山藍子みたい。

 そして、本来これを最初に書くべきかも知れないが、本作もとびっきり美しいシネスコ映画だ。ロケ地は福岡県のようだが、海も空も綺麗。ファーストカットは冬の海を見る大西の横顔アップで、こゝで既にマフラーの青と黄色の美しさに感激した。花火大会の打ち上げ花火の造型や、齊藤なぎさが一人でプールサイドにいる屋上プール場面の色遣いも美しい。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。