[コメント] ザ・ミソジニー(2022/日)
冒頭アバンタイトルの、ブランコのような鎖に吊られたベンチに座っているナオミ−中原翔子のショットから、ゾクゾクする。右にゆっくり横移動すると、画面左奥の階段を降りてくる白い衣装の女・ミズキ−河野知美(このミズキは幽霊か?)。この縦構図にも唸ってしまう。クレジット開けの、大牟田−横井翔二郎とミズキが、ベンツから降りて来て、洋館の中に入る一連のショットも抜群の構図の連続。何て肌理細かなカット割りだろう。
いくつかの強烈なストロングポイントのある映画だが、まずは、舞台となっている洋館が素晴らしい。この建物を見つけたことが、本作の勝因と云うべきだと思う。また、上にあげた3人の主要キャラが皆、とても面白い造型だが、しかし、中原も河野も凄い役者だと感じさせるのだ。特に、いくつかある唐突なキャラ変というかキャラのギアシフトが、ぶっ飛んでいる。
大牟田が当初ミズキのマネージャーというより、付き人のような、部下のような人だと思っていると、途中からナオミと結託し始め、偉そうになる、なんて部分もあるが、河野はミズキの少女時代のフラッシュバック(と私は解した)シーンも演じるし、はたまた、ミズキの母親となって登場した際の、うって変わった傲岸不遜な造型には驚かされる。また、中原−ナオミは、一応一貫性のある人物のはずだが、いきなりの降霊シーンにおける豹変や、大牟田と演劇的な衣装(古代ローマ風?)で登場し、軽口を云い始めたり、右手を上に突き上げるポーズを決めた後、派手な劇伴がかかる中、二重円(魔法陣)の結界を作る場面などは、ハメを外し過ぎとも思うのだが、実に興奮させられたのだ。
ちょっとひっかかった部分も書いておくと、上述の降霊場面における二重露光の演出は、序盤の怖がらせどころではあるが、チープだと思った。ただし、事前に決めておいた合言葉(「すべては神秘に始まり政治に終わる」)が反故にされることで、霊が退いたのかどうか分からないスリルはいい。あと、1階の奥の、開かずの部屋の扱いは、私はイマイチ中途半端というか、もっと鮮やかな使われ方を期待していたのだ。
#冒頭クレジットが通常のエンドロール情報まで出るのだが、監督名の表示が、その他大勢の中に小さく出る。最後は「終」のみで、エンドロールなし。
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