[コメント] マッドマックス:フュリオサ(2024/米)
当たり前のことを何度も書いて恐縮だが、やっぱり面白い、面白くないの感覚は「極めて私的な[満足度/期待度]」に拠るだろう。不満に感じた部分も多々あるけれど、満足感を覚えた細部の方が私には多いし重いということだ。
テクニカルな細部の特徴として、私は前作(『怒りのデス・ロード』)で多用されていた、アクション場面の「コマ落とし」が、本作でも使い倒されているのだろうと予想していたのだが、ほゞ使われていなかった。この点も嬉しい誤算として大きい。
勿論、前作で驚かされた世界観の具現化は、既に見慣れたものとして映ってしまうし、アクション演出も、小ぶりな再生産という感覚を持つ部分はある。だが、序盤のフュリオサ拉致奪還シーケンスから、ママ−チャーリー・フレイザーの活躍を中心に、快調に見せ場を用意し、新キャラーディメンタス−クリス・ヘムズワースも実に面白い造型と思う(三頭立てチャリオット!)。その後も、警備隊長ジャック−トム・バーク登場後のウォー・タンクの攻防戦と弾薬畑(バレット・ファーム)壊滅に繋がる戦闘シーケンスも、こゝだけで、本作をスクリーンで見て良かったと思ったぐらい亢奮した。
あと、生まれた土地(緑の地)に必ず帰ること、とママがフュリオサに云う場面の正面カメラ目線の切り返しには、やはり胸が熱くなるのだが、この後、すぐにフュリオサがディメンタスに同行することになる展開は、仕方が無いかも知れないが、幼いフュリオサの見せ場が一つ無くなったように感じた。また、ディメンタスにとってのフュリオサは、我が子の代わりであり(テディベア)、性奴隷(の候補)では無いという、この父性の感情も、もっと描きこまれても良かったと思う。ついでに云うと、全体にセクシーな見せ場は前作よりも抑制されていると云えるだろう。ヘムズワースの乳首ぐらいじゃないか。
ちなみに、ジャックを演じるトム・バークについて、失望を感じる観客もいるだろうが、それは、ネームバリューがあまり無いことでのバイアスという場合が多いのではないかと思う。彼は『マンク』ではオーソン・ウェルズを演じ、『生きる LIVING』では、黒澤版の伊藤雄之助の役をやった人で、私はとても期待している役者だし、本作でも充分に期待に応えてくれている。あと、ついでに云うのもなんだが、アニャ・テイラー=ジョイは、確かにフルショットでは華奢過ぎてカッコいいとは云えないが、ウエストショットレベルでの仰角画角だと抜群にカッコいいと思う。やっぱりいい顔!と惚れ惚れしながら見た。
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