シェイクスピアが下敷きだろうと凡庸なラブコメは凡庸なラブコメで、観る機会の少ないこのジャンルのコード（規則）は興味深かった。

登場人物はモラトリアムを生きる高等遊民のように描かれる。働く場面なし。社会人とは思えぬほど予定が自由、金に困ってないばかりか理由もなくメチャ裕福。舞台は無菌のリゾート地、肉体美完璧人間が脱ぎまくり。人間関係のすべてが金持ちサークルの中で完結する世界。救急ヘリをタクシー代わりに使って平気なのも、金持ちサークルの外はモブ、奴隷、被差別階級だとナメてるからだろう。

2人が「タイタニックする」ギャグ、上流階級の娘に恋した貧乏画家の精いっぱいの100万本のバラを金持ちどもがコケにしやがって殺す今すぐ殺す、とか思うわけです（いやディカプリオもメチャメチャ金持ちだけどな）。シェイクスピア以前に、同じ業界の偉大な先人キャメロンに敬意を払えよと。

オレなんかマーこいつらいい気なもんだぜペッペッなんて思うわけだが、これがハリウッドラブコメのひとつの典型だとすると、こういうの好きな嬢ちゃん坊っちゃんはやはり映画館で貧乏くさいもんとか見たくねえんだろうな。でもこういう映画特有のグロテスクさというものも、ちゃんと嗅ぎわけて味わっていただきたいなと思う。