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[コメント] SNS 少女たちの10日間(2020/チェコ)

企画に社会的意義はあるのだが制作者にモラルとインテリジェンスが欠けているため、大部分が露悪的なショーになってしまった。
ペンクロフ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画はSNSとりわけskypeを悪の権化に仕立てており、映画の制作者たちはskypeはユーザーの会話内容を検閲すべき、或いは未成年者の利用を規制すべき、とでも言いたげに見える。skypeの着信音を禍々しいアレンジ曲に繋げ、邪悪なイメージを提示する。オレは、こういう安い手法を支持しない。skypeはただのツールなのであって、ツールが悪いと言うのなら電話だって自動車だって犯罪の温床だ。

途中でskypeの相手に「まとも」で「善良」な青年が登場する。地獄巡りを続けてきた女優は彼の言葉に思わず落涙する。彼女はまだいいが、制作者たちも「こういうまともな人もいるんだ!」と感激しているように見える。これはまったくもってガバガバにチョロいと言わざるを得ぬ。当の青年自身が「僕だって変な質問をするかもしれないよ」と警告しているのである。面識のない12歳の少女にskypeでコンタクトをとる大学生が本当に「まとも」で「善良」だと、制作者たちは思ってるのだろうか。別の少女で一発抜いた直後の賢者タイムだっただけかもしれんやんけ。チェコには賢者タイムという概念はないのか? 遅れとるもんな。中ちゃん遅れとるもんな(田中邦衛)。

終盤で性犯罪者「ロード・オブ・ザ・ノース」を制作陣だけで問い詰める展開も、率直に言って正気を疑う。こんなもんきっちりカタにハメてからサツにタレこんで逮捕させるしかないのであって、お手軽に彼を罵倒して映画の安易な「結末」としたい制作者の御都合でしかないのだ。こんな親切な「警告」をもらったら、逃げる判断も簡単だよな。しかしこいつが遠い土地に逃げ(他国かもしれぬ)、ほとぼりがさめてから手近な子供に対してやるかもしれぬ行為に、制作者は責任を感じるべきだ。

不思議なのは、skypeでの会話である程度の撮れ高ができたところで、性犯罪者たちに対して女優が

「ウッソよねーん、アテクシ12歳ちゃいまんねん、成人女性で陰毛ボーボーで毎日やりまくりでんねーん、バーカ死ねバーカ」

と明かさない点だ。これは全員に対してやるべきだったと思う。彼らに「失敗」を体験させ「敗北」を自覚させることには、ハンチクな私刑よりも大きな意義があると思う。いやマーこれは、マヌケな連中のマヌケなリアクションが見たいという無責任な観客の勝手な物言いですが。

(評価:★3)

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