[コメント] ダゲール街の人々(1975/独=仏)
パリの一角、ある街、というか「通り」と云った方がいいような、小さな範囲の住民(多くはお店)のドキュメンタリーだ。勿論、あちこちに演出が施されている。
奇術師の正面カメラ目線カットとアニエス・ヴァルダによるナレーション、ダゲレオタイプの話から始まるが、すぐ後の香水屋さんの挿話が最も印象に残るように演出されている。ドアの窓枠の中の老夫婦として、まるでスチール写真のようなフレーミングで登場し、エンディングも、この香水屋さんの夫婦が家に入り、ドアを閉めるカットでエンドなのだ。
その他の人物では、肉屋、美容理容店、パン屋、雑貨屋?(ビニール、プラスチックと店の壁に書かれている)、配管工?、自動車教習所の指導官など。それぞれの夫婦に、出自やこの街に来た時のこと、出会いと結婚などの馴れ初め、最近見た夢等についてインタビューがある。
店のドアの開け閉め、箒で床や道を掃く動作なんかを執拗に反復したカッティング。あるいは、マッチカットが多数ある。中盤以降、冒頭に出てきた奇術師のショーがクロスカッティングされるのだが、例えば、肉屋の肉を切るカットと、奇術師が自分の腕にナイフを刺して血が流れるカットを繋いだりする。この出血のマッチカットにはちょっと驚いた。
エンディングは上でも書いたように、香水屋さんの老夫婦が締めるのだが、夫人は明らかに、認知力が低下している雰囲気で、顔も無表情だ。だが、夫は彼女の顔がいい、と云う。優しさ(それはヴァルダの優しさ)がよく伝わる。
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