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[コメント] 木蘭従軍(1939/中国)

木蘭(陳雲裳)は登場早々はとても魅力があるとは見えないが、戦闘中に貫禄がついてどんどん好ましいキャラになり、最後には愛すべき魅力に溢れている。これこそが演出の力だと思われた。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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本作は人殺しに躊躇がない。異文化の視点に接して驚かされる処で、冒頭に兎と間違えて隣村の男の臀部を射てしまうギャグからしてやり過ぎに見えるし、木蘭は戦闘で相手を刺しまくるし、元師就任の際も「法に叛く者は斬る」と宣誓している。普通はこういうのは峰打ち、という発想ではないのだ。吃驚してしまった。

劉(梅熹)の朴訥とした青年の造形が素晴らしい。彼はいつから木蘭を女だと見抜いていたのだろう。敵方偵察に女に変装させて、我々は「夫婦に見えるに違いない」と云ったときにはどうだったのだろう。この辺りの心理描写を何もせずにクライマックスの告白に至るのがとても優れている。野営のテント、劉が気づいていると気づいて、木蘭はひとり微笑み、剣舞を舞う。劉も戻ってきていて唄う。いいシーンだった。ラストは故郷に戻り、女に戻り結婚する。

軍師が敵方と通じて敵を引き入れ、その上官の元師は軍師を疑う木蘭の進言をなかなか受け入れず、敵方が誤らなければ負けただろうというところにいいサスペンスがあった。京劇の古典らしいが、話自体が面白い。戦時中で30年代の美術は安いが、舞台劇っぽくシュールに見せている。エキゾティックな甲冑が印象的。

戦闘地帯は砂漠だろうか。変装した狩人はふたこぶ駱駝引いているが、モンゴル方面なのだろうか。ディズニーの『ムーラン』では攻めてくるのはフン族らしく、すると紛争地帯は中央アジアなのだろう。冒頭、もう老人の父親に召集がかかっている。「何で攻めてくるの」「奴らは強盗なんだ」という説明がシンプルでいい。しかし敵方は大日本帝国が仮託されている。中国では、過去に仮託して今日を風刺する手法を「借古諷今」と呼ぶとのこと。日中戦争中にフランス租界で撮られた由。

(評価:★4)

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