コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 小さな逃亡者(1953/米)

大人は判ってくれない』や『赤い風船』の偉大なる先行作らしいけど、単体で観ても気楽に愉しい。キートンばりのコニーアイランド、積み重ねられる小さなユーモアが粒ぞろいに面白い。子供は面白い。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







母が祖母の病気見舞いに出かけ、友達とコニーアイランド行きの約束していた12歳の兄は7歳の弟の面倒見ろと云われて一計を案じ、弟に友達の猟銃で空砲を撃たせ、ケチャップを血に見立てて死んだふり。弟は友達に「当分の間潜伏しろ」と諭されてコニーアイランドへ。

弟は旅立つ前に母親が残した一晩の生活費をくすねており、また瓶回収の小銭集めのノウハウも見つけ、金に困らない子供の享楽が連発的に描かれる。コニーアイランドはキートン喜劇を想起させ、歪んだ鏡も登場。巨大な海岸、巨大な木製ベンチの下、隙間から光線の漏れる光景。

西瓜を喰らい、綿飴を喰らい、まと当てに執着する。最強なのはバッティングセンターだろう。逆手で構えたバッドでボール(トスバッティングぐらいのもの)に挑む彼の真剣さは素晴らしい。彼はエキサイトしており、明らかにキャメラの存在を忘れている。馬の面の奇怪さが強調されるメリーゴーランドの、木馬から半身を乗り出し続ける仰角が素晴らしい。

ポニーに乗る件も傑作で、スキップする編集がいい。最初は一瞬で終わるがひとりで乗れるようになり、次はひとりで爆走している。母さんはと聞かれて逃げ、職員のジョイ青年は兄に連絡、兄は巨大なコニーアイランドを探し回る。白墨でそこら中に書置きする技を実施するが文字を直されるギャグが面白い。終盤に来てもまだ笑えるのがいい。

大雨、誰もいない砂浜でまだ瓶拾っている弟という優れたギャグで兄弟は再会する。「死んでないよ」「そう云ってよ」という素晴らしい第一声の交換。弟は殺した兄のことはずっと念頭にあったのだろうか、忘れていただろうか。七歳児に死の観念はどんなだろう。これは我々の想像の外にある。しかしすでに、彼の生死感は享楽の連続で示されていたのかも知れない。

ラストは戻ってきた母が留守番のご褒美に来週末はコニーアイランドといういいギャグ。母子家庭ものだが、移民ものの背景は私には判らなかった。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。