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[コメント] 未来への迷宮(1935/露)

階段で始まり、階段で終わる。冒頭のモンタージュは、サイレントかと思う。湖?に入って行く小太りの女性。テーブル。犬。午睡する男。これらのモンタージュ。以降、全体を通じて、サイレント的な演出と繋ぎは多数出てくる。
ゑぎ

 セリフを含めた音の使い方は、まだまだ未熟だが、例えば、自動車や鉄道の音を聞かせて、次に人物が振り向くカットを繋ぐ部分など、音を映画で表現する志向性は感じられる。

 しかし、画面造型では目を瞠る場面が続出する凄い作品だ。まずは、門扉や鉄柵の模様(アールヌーボー調というのか)を取り入れた画面の多用、鉄柵越しカットが実に面白い。そして一番驚かされたのは、Dと書かれたタンクトップを着た男が、劇場の美術装置の格納場所(最初は博物館かと思った)を歩く横移動のシーケンス・ショットだ。歩いているうちに、画面奥にバレリーナたちの練習風景が現れる。これには驚く。また、大きな競技場のシーンも、極端にシンプル化されているが、マッサージルームか控え室のような場所と、グラウンドや門との距離感が不思議な空間で、人物が行き来する見せ方がとてもキャッチーなのだ。そして、夜会の幻想も凄い!露光オーバー、ソフトフォーカスの画面。唐突なパイ投げ、装置の変化と噴水。こういう幻想シーンの挿入も、サイレント映画っぽい構成だと思うが(サイレント期のルビッチとかルノワールとかもやってますから)、具現化された画面は見事なものだ。とても面白い。

(評価:★4)

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