[コメント] ヒトラーのための虐殺会議(2022/独)
劇伴も解説もなく会話劇が続く。状況認識に終始する前半はいささか退屈。中盤以降、頭をもたげる個人の疑義や感情が集団としての使命を言い訳に封印され、保身という思惑を暗黙の裡に一致させ、ことの是非ではなく合理で一気に大量殺戮を正当化してしまう終幕は圧巻。
描かれるのは、仕組みとして合理的であるという「理由」が、人として道徳的であれという「感性」を抹消してしまう過程だ。恐ろしいのは議事はあくまでも整然と民主的に進行されていること。我に返ってみれば私たち日本人が考える民主主義と隣の大国が標榜する民主主義だって似て非なるもの。
それどころか国内だって・・・民主主義を標榜すれば価値は一致し、和解は成立するとという“幻想”に気づきつつも「民主主義幻想」にすがるしか術がない私(たち)とは、本作の会議の出席者たちと本質的に同じではないか。なんと危ういことだろう。そんなことを考えた。
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