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[コメント] ハワイの夜(1953/日)

ハワイ日系人の受難を扱う真面目な作品。甘いロマンスの歌謡映画も意欲的に撮られており、クライマックスは名作『婦系図』の変奏で渋い。マキノは戦後、キリスト教主題を多く撮っている。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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40年、鶴田浩二は世界選手権の水泳選手団としてハワイを訪れ(そんなノンビリしたことしていたのだ)岸恵子と知り合う。誘われたパーティで父の小杉勇と息子(岸の兄)の水島道太郎の対立を目撃してしまう。江川は昔の苦労を語る、風呂敷ひとつでやって来て大農園で働いた(翌日、デートで広い広いパイナップル畑が映る)。チャイナに手を出してはいかん、アメリカにも日本人がいると知ってほしいと鶴田に訴える。水島は米兵志願。『山河あり』の主題が先取されている。

鶴田は再会を誓って帰国。パールハーバー空襲、鶴田は母に「私は死にません。死にたくないんです」と語って出征。ジャングル彷徨うとき玉音放送が(吹き替えで)流れる。同じ放送を耳にして小杉は倒れかける。私たちは日本人、倅はアメリカ人と彼が嘆いた息子の水島は片脚失って帰国する。

鶴田の帰国船はハワイの傍を通り、鶴田は下船。無論許されていない。5年前に宴席の催された自宅のホールで泣きながらピアノ弾く岸が振り向くと、テラスとのカーテン越しに鶴田のシルエットが浮かび上がる。このショットはマキノ的には傑作『婦系図』の山田五十鈴が想起させられ、同様にやはり幽霊かと思われたら本物だったという変装があった。疲弊し死んだ鶴田を運び去るMPが、遺体に野辺の花を一輪そっと添えるラストがとてもいい。終戦の和解を告げたのだろう。この収束で本作は記憶に残る作品となった。

新東宝と新生プロの提携作品。選手権の水泳場は観覧席の広い立派なものだが、スタート台から水面まで1ḿほどの高低差があり驚かされる。岸と鶴田の甘ったるいタイアップ主題歌 ♪しとしのハワイがホールと砂浜で交代して唄われる。岸はビキニ姿で鶴田と水泳。サイレント仕様の沈黙のなか、波頭の光輝く海が綺麗に撮られている。バッキー白片とアロハハワイアンズが特別出演。マキノと松林の共同監督。水の江が岸のお婆さん役で登場している。

(評価:★4)

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