[コメント] 前科者(2022/日)
続いて女子が乗る自転車。よたよた。男の子の自転車、ゆっくり倒れる。砂地の触感がよく出ている。あるいは、森田剛が、初めて有村架純の保護司を訪ねる場面。玄関の前で深々と頭を下げる有村のカットで、かすかに風が吹き、髪が揺れる。これがいい。保護観察対象者の家の窓を割る描写には過ぎたるものを感じたが、それはまあ目をつぶるとして、その他の対象者たちとの関係や、コンビニ店長の宇野祥平、保護観察所の北村有起哉らも含めた、有村の対応の鷹揚さ、その科白回しが、いいなぁと思いながら見ていた。
しかし、中盤以降、どんどん違和感が生まれる。題材が題材だけに、もうちょっと抑制を効かすべきだったのではないだろうか。磯村勇斗が有村の家に来て、怪我の手当てをした後のシーン。入院治療している被害者の警官−戸田昌宏から、重要な(?)情報を聞き出すための手段。あるいは、フラッシュバックが多過ぎて冗長だと感じる。まず、有村の中学時代のフラッシュバックは、緩い演出及び画面造型だ。もっと厳しさが欲しい。さらに、森田剛と若葉竜也のフラッシュバックは、画面化する必要もないじゃないか。ほとんど既に科白から認識できた事柄の映像化に過ぎず、とてもクドく思えたのだ。もう一つ云うと、河原のシーンで森田の頬にキズがついているのを見せる順番も、私は時系列でいいと思う。キズを先に見せて、フックにするのを良いとする観客もいるとは思いますが。
さて、この映画も撮影は、ほとんど手持ち(ハンディカメラ)だった。正確に云うと、建物や町の外観とロングショット(例えば、有村が自転車で向こうから走って来るカットなど)は固定だったが、人物にある程度寄ったカットは、ほゞ手持ちに見えた。切り返しなんかでも、微妙に揺れているカット。なんかほとんどの日本映画は、こんな画面だ。ドキュメンタリータッチという名にかこつけた現場の効率化だろうか。私には貧乏くさい画面に見えるのだが。
#有村の中学時代は藤沢市片瀬が舞台だが、保護司の活動は、蒲田辺りの設定。
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