[コメント] 幸運の星(1929/米)
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メロドラマの出来は悪役の造型如何にかかっているが、本作はこの点平凡。グイン・ウィリアムズはジャック・レモン似のいい俳優だが、その造型は厚かましい自分ファーストというぐらいのものだった。チャールズ・ファレルは電線架設業についていて上司がウィリアムズ。ふたりはフランスの西部戦線へ志願。ゲイナーは奨励されていたのだろう、ふたりに同じ雛型の激励の手紙を送っている。ファレルは戦争中なのに遊びに行くウィリアムズに自動車譲って馬車で戦場に向かい、足の自由を失う。光の明滅だけで爆弾が示された。
ファレルは帰還して車椅子生活、その背凭れは籐椅子のもの。農家の幼いゲイナーと親しくなる。この可愛く微笑ましいデートがいい。遅くなったから早く帰れと云われてゲイナーはどっちにしても打たれるわと応えて、家族との関係を一言で説明し切ってしまう。卵で洗髪すると汚れたゲイナーの髪が逆光に輝く。力の入った撮影美術だった。
夜抜け出してファレルの家で着替えをしてダンスパーティに行く。人混み掻き分けてウィリアムズに頭突きしてホールに入るゲイナーといういいギャグがある。ファレルも行けたらいいのにねとゲイナーは純真の残酷をみせ、ファレルはひとり松葉杖の練習して何度も転倒する。この転倒が迫真。しかしゲイナーの母は身体障碍者を嫌う。入っちゃ駄目と云われたのとゲイナーが云うとファレルは机を入口に置いて、ゲイナーは外に椅子置いて対座する。何か童話のような美しさがある描写だった。
貧農一家のゲイナーは牛乳を水で薄めて配達したりか、投げられたコインを足で隠して二重請求したり、相場より高くイチゴを売りつけたりして、誤魔化した貯金でドレスを買う。全部知ってもファレルは怒らす、もうしないと約束するかいとだけ云うのがいい。ゲイナーは母に、彼に正直が大切と教えてくれた交際を懇願して拝むが、子沢山で結納金たんまり貰った母は許さず、ウィリアムズと結婚させられることになり新居へ向かうべく駅へ。ファレルは松葉杖で大雪のなかを突進し、最後は杖捨てて徒歩でゲイナーを奪い、ウィリアムズを出発した列車に押し込めて、歩けるようになったのは君のお蔭と線路上で抱き合う。列車を斜めに見送るいいラストショットがあった。
しかし、足の神経を失ったと思しきファレルが再び歩けるようになるのは無茶。精神力を過大評価するのは日帝陸軍だけではないということか。しかし童謡だと思えば気にならないところ。それとも精神に来たした疾患が治ったということだっただろうか。主に農家のセットで展開する物語。冒頭、早朝作業のゲイナーの灯火が霧に滲むのが美しい。
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