[コメント] アパッチの怒り(1954/米)
本作は、『アパッチ峠の闘い』のラストで生まれたコーチースの息子ターザが主人公だ。上記3作の話の流れを時系列に並べれば、『アパッチ峠の闘い』『折れた矢』そして本作になる。3作通じてジェロニモが脇役、しかも残虐な殺人者として描かれているのだが、見方を変えれば、ジェロニモの白人への反乱と、コーチース/ターザ親子による鎮圧を3作通じて描いている、ということができるだろう。
さて3作を現在見比べてみると、いや圧倒的に本作の映画性が抜きんでているだろう。3作とも見応えのある映画なので、それは好みの問題と云われるかも知れないが、もう第一感、画面の幅と奥行の広さ深さが全然違う、と感じられる。居留地や戦闘場面は前作『アパッチ峠の闘い』と同じ、アーチーズ国立公園でロケされているにも関わらずなのだ。画面の奥に人や乗馬が小さく映っている奥行きの深い画面。あるいは、度々インディアンの習俗が何の説明もなく映されるのだが、いずれも何とも美しい色遣いなのだ。例えば、戦いの前夜に戦士がダンスをする場面。主人公ターザ=ロック・ハドソンの恋人バーバラ・ラッシュが悲痛な表情でダンスを見つめ、振り向いて、ゆっくり歩いて行く後ろ姿を映す。なんて豊かな時間の演出だろう。あゝこれぞ、サーク+ラッセル・メティの刻印だ。
尚、アクション場面では、カメラに向かって槍や石をなげる、といった演出が多いので、もしや、と思っていたが、見終わって調べると、矢張り、元々3D撮影された映画のようだ。アンドレ・ド・トスの『叛逆の用心棒』(1953年)でも同じような物を投げる所作が多かったが、それ以外のシーンでも、手前に変な遮蔽物を置いたりして、無理やり3D効果を出そうとしていた。しかし、本作ではそんなワザとらしい3D画面の造型は感じられない。とにかく全編に亘って洗練された画面の西部劇に仕上がっている。
#備忘で少し配役等を記述
・ターザ=ハドソンの弟ナイチはバート・ロバーツ(後のレックス・リーズン)。側近のようなチャトは、ユージーン・イグレシアスだ。
・ハドソンが裸馬に騎乗する際、ワンステップでジャンプし跨るのがカッコいい。
・ターザを信頼する騎兵隊の大尉はグレッグ・パーマー。その副官(軍曹)は、ジョー・ソーヤー。この頃はもうかなり老けて見える。
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