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[コメント] 二人の銀座(1967/日)

話は地味だが愉しい歌謡映画。表題曲はスネアのロールがやたら格好いいし、アイドルのアルバムの埋め合わせみたいな和泉雅子「踊りたいわ」が可愛い。撮影美術も相変わらず極上の日活モノクロで、OPタイトルからして格好いい。山崎善弘さんのご冥福をお祈りします。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ネオンガンガンの銀座はすでにティーンの街ではない。撮影はセットもロケも屋外に殆ど出ず、小林哲子新田昌玄の回想の物語に横滑りするのは時代の必然だったのだろう。

青春ア・ゴー・ゴー』から浜田光夫が抜けて全員学生になったヤング・アンド・フレッシュ。和泉雅子が日比谷公園の電話ボックスに忘れた楽譜拾って銀座辺りで大ヒット。前半は明らかに盗作なのに色々云い訳しまくる山内賢が見苦しくて仕方ない。噂がたってから彼等はこれはいかんと、プロデューサーの片山明彦に告白する。このジレンマは面白い。すると片山は権謀術数から山内の作品としておけと云い、和泉の姉の元カレ新田昌玄から30万円で権利を買おうとしてカネ突き返される。

居場所を突き止めた山内らに、新田は告白する。若い頃自分の作曲を大家に取られて業界を去った、音楽は本来誰のものでもないから使ってくれ。このふたつは矛盾しているような気がするので、観客の胸には蟠りが残る。しかしこの、川崎(ずいぶんな地政学だ)のキャバレーの片隅でピアノ弾いていて、指摘されると表題曲をポロポロ弾き始めるシーンはいい(本当の作曲はベンチャーズだと語れば面白かったのだが)。

収束は存外に刺戟的。山内らは利権まみれのプロを嫌い、愉しくやろうぜと和泉を交えてフェスで唄う。表題曲は100万枚のヒットだし、和泉と山内はずっとレコード出していたのだから、プロ否定は説得力に欠けるが、健全な収束に見えた。芸能界は片山みたいなチンピラが幅を利かせているというイメージが描写される。バニーガールズという簡単に登場する三人娘が可哀想なような使われ方だった。尾藤イサオは時代。

(評価:★4)

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