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[コメント] 家内安全(1958/日)

大好きな飯田蝶子が主人公を演じるホームドラマ。飯田の息子が佐野周二。その妻(後妻)に三宅邦子。先妻の生んだ子として、上から平田昭彦江原達怡峯京子がいる。その下に三宅の連れ子もいる。というのが家族構成。
ゑぎ

 佐野は会社の社長で、平田はその会社の総務課長。江原も総務課員。峯は銀座のブティックで見習いをしている。開巻は、末っ子(三宅の連れ子)が、写真を見せながら、家族を紹介するアバンタイトルだ。

 全編通じて、飯田蝶子は主人公で間違いない役割だが、次に重要な役は、実は江原達怡で、彼は少し頭が弱く、その分純粋で、皆から可愛がられるし、プロットの軌道に、変化を与えていく役割だ。飯田も、江原をとても贔屓する。比べて、兄の平田と妹峯京子は、ちょっとズルい、頭のいい人。飯田は平田のことを「人間のクズ」と呼ぶシーンもあるが、どこにでもいるレベルの嫌な男とも云えるだろう。

 明確なヒロインは二人おり、一人は、平田や江原が毎朝乗る、新橋行のバスに乗っている家田佳子。江原には家田の頭に後光が見える。江原の片思いな訳だが、兄の平田も家田を狙うようになる。もう一人のヒロインは、江原の同僚の総務課員、中田康子。本作の中田も良い役で、アパートの共同洗い場のような場所で、洗い物をするカットなんて、とても可愛い。江原は中田にも好かれている。

 そして中盤以降は、またぞろ、スモールワールド(世間は狭い)的ご都合主義が炸裂して唖然としてしまうのだが、かいつまんで書いておくと、佐野は熱海で浮気をして飯田に乗り込まれて叱られるが、その浮気相手が坪内美詠子。坪内の弟は、太刀川洋一で、太刀川のバイト先のバーには女給の青山京子がいる。なんと青山は平田と関係がある。また、青山と中田は同じアパートに住んでいる。さらにさらに、とまだあるが、ネタバレになるので、こゝらで割愛する。こゝまで偶然を重ねると、いっそ潔いとも思える。

 さて、江原と結ばれるのは家田なのか中田なのか、いやいずれとも結ばれないのか、また、青山の身の振りようはどうなるか、というような話が焦点になるが、勿論、飯田蝶子が絡んでプロットが駆動するのだ。磐梯朝日国立公園でのロケシーンなんかも見どころだが、飯田にも見える後光のカットには瞠目する。

(評価:★3)

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