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[コメント] 胎動期 私たちは天使じゃない(1961/日)

新藤版『女の園』。無名に終わった女優たちさんが頑張っていて清々しく、悪役の大塚道子はゴリゴリ。そして千石規子三原葉子のメインマッチが炸裂する。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







日記を盗んで見た見ないで争っていた広村芳子山崎左度子が、教官の大塚道子(上手い)の監督権乱用だったと知って謝り合い、共闘を始める。この流れがとてもよく、映画が盛り上がる。大塚については、彼女の生真面目を病院が利用してきたのよ、という鋭い指摘もある。「創立以来勤務していますけど貴女みたいな生徒ははじめて」と詰る婦長に「先生は創立以来進歩していないのね」という生徒の返しが巧い。

この先生と生徒、対立ばかりしているのではなく中間地帯があり、そこにオットリした高須賀夫至子がおり、母親の三宅邦子と同期の賀原夏子がいて、「ナイチンゲールをきどっていたけど、47になって、これから待っているのは孤独と死だけ」と漏らしたりする。なのに生徒は恋愛禁止。スト(大塚の謝罪などを求めた戴帽式への出席拒否)を仲裁して先生たちに「貴女が勝手に約束した」と難詰されて辞めちゃう池内淳子の先生の件も白熱していい。組合とか自治会とかは、こういう特殊な職業ほど結成が遅れるのだろう。そこで足引っ張るのがキリスト教の精神、では仕方がないと思わされる。

ベストショットは良い子役の松浦浪路(ついに大人しい高須賀が怒ってスパイとバラす)と山崎との窓硝子割れる喧嘩の件。石浜朗の線路脇の貧乏な下宿の美術もいい。しかし、彼を過労死させちゃうのは安直な印象が残った。あと、首をやたら斜めに倒している千石規子の不敵な造形も印象深い。

高須賀が答辞を破り捨てる卒業式は箆棒で、強烈に映画は終わる。看護師になる以上に大切なことがある、このままここで看護師になっても仕方がない。それを卒業式で表明する劇作は盛り上がりだけを考えた手法めいて見えるが、劇作とはこうするものなんだろう。もっとも、対外的に訴えるという意味はあるのだろうけど。

♪自由の国目指して、みたいな歌を合唱しちゃうのは歌声喫茶世代なのか。1回生の1年下が2回生、と数えるのが珍しい。小田急西生田駅はいまの読売ランド前駅。本作は新東宝救済のため外部のスタッフキャストが集結している由。

(評価:★4)

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