[コメント] 上海バンスキング(1984/日)
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華やかなステージなのに、美術は何であんなに影をつくるのだろう。三谷昇の管理するアパートだってそこら中に暗く影が落ちている。あれが何か全体を鈍重にしている。中国人は採光を暗くする文化で(中国商店はたいてい薄暗い)リアルなのかも知れないが、ミュージカルでリアルを追及しても仕方なかろうに。
前作『蒲田』の夢オチを反転させて、ジャズの夢のなかへ現実から逃避するようなラストは陰惨だ。ラス前の、メキシコへ行ってジャズを続けようとする幽霊船の件も暗い。撮影も暗く話も暗い。それでステージも暗いのではどうしようもない。
「愛の水中花」の歌が下手だとさんざ云われた松坂慶子が唄うジャズ映画。そんな下手ではなく阿川泰子並の可愛い子ちゃんボーカルだが、弾ける面白さが音楽にあるとは感じられない。あと、彼女が序盤、華やかな音楽生活を「阿片の夢のよう」と喩えるのは禁句だと思う。
本作は南里の伝記を踏まえられているらしいが、どこまで本当なのだろう。共同租界のボスがアメリカ人とか、連中のジャズは日中共同参加、開戦でもう続けられないと去っていく中国人が描かれている。上海の租界は37〜41年を孤島期と呼ばれ、共同租界とフランス租界は41年まで存続したとのことだから、日中開戦までアメリカ人が租界にいるのは正しいらしい。
日本軍による中国民間人の惨殺が描写されるのは当然。一方、夏木勲のような自軍を自嘲する大尉がいたとは思われない。マルクスボーイが特高になる平田満のような例があったのかは知らない。あんまりありそうな話とは思われない。あと、何かを使用とした寸前に邪魔が入る(松坂が風間を撃つ寸前に平田が入ってくる等)という演出が何度も繰り返されるのも安かった。
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