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[コメント] 典座 -TENZO-(2019/日)

観終わって「?」がいくつも浮かんだ。作者たちが体験し伝えたかった「想い」が、私には届いていないのだと上映後のトークショウで分かった。その「想い」は抽象的で、62分の短編では良くも悪くも「宗教」のテリトリーを脱するまでには消化しきれていないと感じた。
ぽんしゅう

監督の富田克也と脚本の相澤虎之助は、当初、現代の僧侶に批判的な物語を企画したのだという。しかし、映画にも登場する曹洞宗の指導的尼僧、青山俊薫のもとを訪ね話を直接きくことで、そのたたずまいが醸す雰囲気と人格に心を打たれ、金品まみれの葬式坊主を形式的批判することの無意味さを“悟らさられた”ようなのだ。

で、この尼僧との問答をドキュメント部に配し、実在する二人の若き僧侶の逸話をモデルにドラマ部を構成したとのこと。ただ、いかんせん60分程度の尺では、高僧の「御高説」と巷の悩める「坊さん」は化学反応を起こすには至らなかったようだ。私が観たかったのは、今の「日本社会」のなかのお坊さんたちの姿ではなく、お坊さんたちの姿を通した「日本社会」なのです。

富田克也と相澤虎之助は、167分の『サウダージ』、『バンコクナイツ』は182分と、長尺映画で独自の凄味を見せつけたコンビだ。彼らの資質と短編という手法の齟齬なのだろうか。

(評価:★2)

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