[コメント] 第七の十字架(1944/米)
アンナ・ゼーガースの小説から逃走部分だけ引き抜いた作劇らしいが、リアルタイムで撮られた意味は充分あっただろう。正義と国家が対立するとき人はどうすべきかをリアルタイムで問うて切実である。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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1936年の強制収容所からの逃走を扱う。語り手は逃亡罪で殺害されて全能の視点を与えられている、というのが目新しく思われる。そして仲間のスペンサー・トレイシーの逃走を追う。
助けてくれない昔の恋人の断片は苦しく、屋根を逃亡した末に飛び降り自殺する軽業師の件は残酷だ。見物する群衆を映画は皮肉っている。「世の中かわった。人の非情を見なくていいから、死んだ方がいい」と云われる。
サスペンスとしてはヒューム・クローニンとジェシカ・タンディの夫婦を訪ねる件が最良で、夫婦はトレイシーを脱獄者と知っているだろうに、何で陽気に迎えるのか判らないという緊張感が素晴らしい(後に新聞取っていないという科白で転覆される)。クローニンはナチの「子供手当」を賞賛し、ミシン工場は銃生産でフル回転と云うのだった。終盤は物語は弛緩しており、宿屋のシグニ・ハッソとのロマンスは幾らなんでも簡単過ぎただろう。
舞台のマインツはグーテンベルグの出身地とのこと。当時すでに「地下活動の活動家」が知られていたということからして勉強になった。人の高潔が信じられぬと云われ、「神が与えた良識は根絶やしにはできない」と最後に語られる。
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