[コメント] 第七の十字架(1944/米)
1936年。第二次大戦前のお話だ。政治犯向けの強制収容所。グラウンドに立っている磔刑のための十字架のカット。脱走者は7人。中にスペンサー・トレイシー。
モノローグは首謀者でトレイシーの相棒だが、すぐに捕らえられ、十字架にはりつけられて死ぬ。カメラは上空、雲の上へ。以降は死者によるナレーションになる、というファンタジックな処理。
トレイシーのマインツへの旅。脱走者はナチスに対する反政府運動家だ。全編ドイツ国内が舞台で、トレイシーもドイツ人を演じているが、無論皆英語を喋る。前半は次々に仲間が捕まるか殺される場面が続く。元軽業師が屋根の上を逃げるシーン等なかなか見せるのだ。途中、軽業師の知人だった衣装屋のアグネス・ムーアヘッドなど支援者も現れる。
マインツへ到着したトレイシーが身を寄せるのは、かつての友人、ヒューム・クローニンとジェシカ・タンディの夫婦(この二人は実生活でも夫婦)の家。クローニンは『真昼の暴動』のような悪役もこなすが、本作ではとても良い人の役だ。クローニンがゲシュタポに連行され、口を割るかどうか、ハラハラさせられるのだが、心配するタンディも中盤はヒロインのような扱いに見えて来る。
終盤、トレイシーはクローニンの家を出てパブ兼宿屋というような場所に潜伏する。こゝで女給役として出て来るシグニ・ハッソが真のヒロインなのだが、彼女とのシーンは完全にハリウッド調メロドラマとなってしまい、ちょっと興覚めだ。ジンネマンもこの当時はビジネスライクに娯楽性を盛り込んでいる。そもそも冒頭の処理からファンタジーだったのだ、ということを思い出させる。
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