[コメント] 武士道無残(1960/日)
砂漠を逃げる冒頭はじめシュールな描写群は吉田喜重が想起させられ、序中盤の緊張感は良好、しかし収束も喜重好みのグダグダでこれは好まない。小林『切腹』(62)は本作の剽窃ではないのだろうか。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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切腹は忠義の華との定義が掲げられ、運命を淡々と受け入れざるを得ない若者と周辺の緊張感、微妙な感じがよく出ている。単純なリフレインの音楽がいい。「批判は許されんのだ」「武士の生活はしきたりが第一」などと云われる。この緊張感は森美樹の自殺した不幸を我々が知っているから、という邪念も込みになってしまうのが苦い。
江戸に(殉死失敗が)知れたら云いがかりをつけられる、という家老渡辺文雄の認識と、殉死直前の飛び込みの上意による禁止命令とは正反対の事態だが、時代の端境期だったということで了解はできる(渡辺が間抜けと取るべきか)。殉死制度自体が揺れていたのだろう。時代が揺れ動くがゆえの不幸というものが感じられる。
しかし高千穂ひづるのよろめきはどうもついていけない。「貴方は私のなかで生き続けていくのよ」と。これも吉田喜重の類型で、女のよろめきに話をもっていかねばならないという決まりでもあったのかと思わされる。殉死中止で生き残って弱った、というのは判るのだが、話が滑稽に振れており、それは本意ではないと見える。
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