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[コメント] 豪傑児雷也(1921/日)

開巻は鍾乳洞の天井か?右にパン及び小さくティルトダウンする。カメラを動かすショットはこゝだけだ。以降ラストまで、全て固定。ほゞフルショットか引いたロングショットだが、一部、ニーショットレベルの寄りの画面がある。
ゑぎ

 また、インタータイトル(挿入字幕)は章題のような状況説明の文言のみ。

・字幕「盡きせぬ縁」

 野原で尾上松之助−児雷也と子供を連れた女剣士(?)が何やら会話をしている。挿入字幕で科白が示されない(以降も科白の字幕は全くない)ので、状況が良くわからないが、女剣士に見えるのは片岡長正−綱手姫か。

・字幕「幼時を語る」

 侍たちが歩く山道。崖上に倒れている男の子が発見され、救出されたように見える。章題から、児雷也の少年時代かと思う。一人の侍に背負われる。続いて、前章の野原の3人にアイリスイン。児雷也だけ消えて、残った2人は驚いている。このショットで、女剣士と思った人物は男優だと分かる。続いて場面が変わり、河原で立ち回りするシーン。児雷也が消えたり出現したりする演出。固定ショットのほゞ中央に児雷也がいて、周りをモブの相手が動き回る。児雷也はガマガエルになったりする。次に雲の上イメージ。一人の男を抱えている児雷也。河原の侍たちは、噴水のような水がかかり、逃げ回っている。

・字幕「快笑」

 山上のような高台に4人。児雷也と野原にいた2人、及び雲上で抱えられていた男か。途中で一人一段と高いところ(岩の上?)に児雷也が移動し消える。

・字幕「管領足利持氏公の憤り」

 屋敷内。沢山の家来たちと殿様。同じ建物なのだろう、濡れ縁に児雷也が出現。三方(お餅の台みたいな)を持っている。屋敷の家来たちが現れ、闘いになるかと思ったが、何やら会話しているのを引いた画で見せる。屋内に入った児雷也は、三方を殿様に渡し、恭しく手をついて礼をするが、いきなり側近の男に掴みかかる。このカットはニーショットレベル。さらに打擲し、側近は連れて行かれる。児雷也はまた座って殿様に礼をする。こゝでアイリスアウト。かなり謎のシーケンスだ。

・字幕「怪傑の争ひ」

 雪降る中、大勢を相手にした立ち回り。児雷也はガマになったり、煙が出て人に戻ったり。大ガマの口の中に吸い込まれていく侍たち。特撮はとても上手く繋がれている。しかし、殺陣は歌舞伎調のゆったりとした段取り芝居。最後に敵は大蛇になる。途中、加勢で来た児雷也の仲間が変身したのはナメクジか?児雷也と2人で大蛇男を討つ。

・字幕「禪秀入道の滅亡」

 大きな門の前、乗馬した侍と家来たち。児雷也が出現し、あと加勢の男女2人も参加して殺陣が始まる。こゝも動きの少ない殺陣シーン。字幕の入道と思われる人物が討ち取られる。すると画面奥の門が開き、乗馬の武士が現れる。馬上の武士に寄った仰角ショットでいきなり終わる。このラストカットが全編で一番寄ったショットだと思う。

 全体、映画製作の楽しさが伝わる、今見ても愉快な作品だ。しかし私が今までに見た1921年製作の映画には、ラング『死滅の谷』、ルビッチ『山猫リュシュカ』、キング『乗合馬車』、チャップリン『キッド』などがあり、これらと比較するのはお門違いとは思うが、この時代の彼我のレベルの相違には、愕然としてしまう。

(評価:★3)

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