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[コメント] 電話は夕方に鳴る(1959/日)

ミステリーの形式だけ借りたオネオネとした作品で、ひとつの町の群像が巧みに浮かび上がってくる。倉敷ロケのキャメラがとてもいい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







映画の結論はつまり、この誘拐事件で中央の自民党からも見放された千田是也が、それでも次の選挙に出馬する、これが「大掃除」の結果なのだ、ということなのだろう。社民党という野党の議員秘書の戯画で揶揄れており、先行する山本薩夫の、左翼にシンパシーを抱く地域政治地図映画とは差異がある。千田が政党政治を離れたところで市長を続けるのだ、という処に映画は将来の希望を見ている。

これが当時の(新藤の)認識なのだろう。当時はそれが停滞を一新する方法に思えたのだろう。いま観ると、大した見識とは思われない。政党色を消して無所属の地方首長・議員の立候補はいまや常識となっており、しかし出てくるのはへんな右翼(保守とも呼べないような)のワンマン首長ばかりだもの。

覆面した紅団という高校生たちは抑圧を感じており、それは市長を結局別に狙った犯人ではなかったのだから偶然の一致でしかないのだが、有力者に押さえつけられた閉塞する地方政治とちょうどリンクした、ということなのだろう。仁木多鶴子の次女が逮捕される重たい話にする積りはないだろう。真犯人は兄貴に追い出されて町を去り、愉快犯だったのかなという処で終わる皮肉は為政者への軽い𠮟責として加減がいいのだろう。破壊を叫ぶ高校生とは59年に刺激的だろうが、彼等はまだ客観的相関物を発見できていない、積極的に愉快犯であるようなタッチである。まだ「若者」についての認識が定まっていない具合だ。本作はそんな時代の空気を記録している。

ロケ地は仮名が使われるが倉敷。冒頭の通学帰宅からしてキャメラがとてもいい。お濠や美術館などもいいのだが、一般的な当時の地方都市を記録した処がとてもいい。商店が開いている風景だけで和むものがある(当節は倉敷でも殆ど仕舞た屋だろう)。私的ベストショットは空き地で縄跳びする子供たちを捉えた捨てショット。釣り場や駅前のロケもとてもいい。

(評価:★4)

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