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[コメント] 天国でまた会おう(2017/仏)

冒頭から真俯瞰とヒッチコックが羨むような移動撮影。クラシカルな回想形式で、塹壕戦から突撃シーン、爆撃シーンの顛末は良いと思う。特に、中尉プラデルの登場は、塹壕の奥の乏しい光の中に、葉巻の煙で表現される。この辺りはとても期待させるものだ。
ゑぎ

 しかし、良いのは戦場場面までで、パリのシーンから失速する。話の運びが遅い。例えば、各シーンの導入部で俯瞰からのドローン移動、あるいはクレーン移動があり、徐々に、かったるく感じて来る。窓への寄りから、窓枠をすり抜け、室内へカメラが入ったり、といった移動撮影自体は楽しいのだが、小さなドローンを使っているのか、CGなのか分からないが、画質はイマイチだし、そう度々やられても飽きて来るのだ。こういう演出は、こゝぞ、という場面でこそ使うべきだ。

 あるいは、ルイーズの前でエドゥアールがおどけて仮面をとっかえひっかえする演出は、『レオン』の形態模写の場面(マチルダが「クイズをしよう」と言い始めて、ウェイン、マドンナ、モンロー、チャップリン、ジーン・ケリー..と続くとんでもなく醜悪なシーン)を思い起させる。

 後半の詐欺の設定も何だかミニマルなもので、スケールの小さい話だ。さらに、プラデルの退場シーンの演出もしょぼい。エドゥアールと父親とのクライマックスは感動するが、その後の展開はとってつけたようで、こゝはキャラクターがプロットの奴隷だと感じる典型例だろう。エピローグも演出は捻りなし。息子が斥候だった、というのも、後出しジャンケンのように感じる。

 仮面等の美術は見事。これがなければ、1ポイント下げるだろう。

#ピエール・ルメートルの「悲しみのイレーヌ」から続く三部作は楽しく読んだが、本作の原作は未読。多分、本作も、小説家が映画脚本に手を出して、映画を損ねた例と云っていいだろう。

(評価:★3)

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