[コメント] 父と子 続・名もなく貧しく美しく(1967/日)
「劣性遺伝」の風評への抵抗という主題は真摯なものだが、かの静かな名作の続編に前衛手法を採用しては虻蜂取らずだし、終盤の迷走はいくら何でも拙い。美点は原泉さんの大活躍。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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小林桂樹を悪役にする意図が判らない。なぜ彼が「劣性遺伝」の風評の片棒を担ぐのか、まるで説得力がない。彼の真摯な生き様こそが描くべきことだろうに。あげくが北大路欣也との殺し合いとは意味不明のレベル。
内藤洋子と田村亮がキリスト教で結ばれるクライマックスも判らない。それなら当然に、序盤からキリスト教とは何ぞやと問い続けなければならない。直前の北大路は即興の牧師のようだ。二人三脚はさすがにダサい。これも意味不明の赤ランプが点滅している。何なんだ。
松山監督のこういう題材を取り上げる志は本当に立派だと思うのだが、トンデモ映画紛いの出来では弱ってしまう。肝心の「劣性遺伝」に係る科学者の説明(この図柄はオープニングタイトルにも採用されている)も短すぎる。このテーマなら、ここだけで10分20分使うべきだろう。
タイトルに拘る難癖は好きではないのだけど、これでは「父と子」でもないし「Our Silent Love」でもない。こんな中途半端にするなら、序盤の北大路の結婚不履行話で全編通せばよかっただろうし、「劣性遺伝」を真面目に取り上げるなら北大路はいらない。あるいは、いっそ北大路を田村の役に割り当てればいいのにと思う。
本作の見処は前作から引き継がれた、手話と字幕の会話のほうが、健常者の言葉による会話よりも深いものなのだというスタンス。出番多い原泉が良好、北大路に金せびられていなす件など愉しい。
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