[コメント] みんなの学校(2014/日)
矯正されるべきは規則に準じられない子供たちではなく、規則が自分の唯一の尺度だと思い込む普通の子供の素直さが持つ罠であり、さらに言えば規則さえ整えてしまえば、ことの9割は完了したとする(私を含めた)大人たちの偏狭と安易さだということがよくわかる。
木村校長は思いをよく語り、校内をよく走る。校長は相手の頭(理屈)に語りかけるのではなく、心(気持ち)に語りかける。だから校長の言葉には一点の空々しさもなく、行動には嘘がない。きっとこれまで、さんざん悩み今も迷っているからだろう。それを受けて、先生たちも、よく語り合い、よく動く。やはり、さんざん悩んでいるのだろう。管理作業員の山本さんも自転車を駆って、学校を出て街へ、子供の家へと走る。いかつそうに見えるが、きっと優しい人なのだろう。
確かに、この大空小学校の校風は木村校長の信念と強いリーダーシップで成り立っているように見える。しかし、最も安易で駄目な、そして多くの人が陥りやすい過ちは「あの校長だからできるのだ」「やはり組織はリーダしだいだ」と訳知り顔で言ってしまうことだろう。校長をスーパーヒーロー(ヒロイン)として特別視し、教育界のカリスマ教祖のように持ち上げて安心してしまうこと。それは自らの責任を放棄してしまうことにほかならない。
必要なのは、特異なリーダーの指示に盲目的に従うことや、「個」より「多数」を重視するマニュアルによる近道でなない。先頭を行く者と同じように迷い悩み、安易に事象をマニュアル化し規格化しない努力こそが必要なのだ。それをこのドキュメンタリーは教えてくれる。なぜなら、「教育」の相手は「人間」なのだからと。
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