[コメント] ジュピターズ・ムーン(2017/ハンガリー=独)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
ガリレオが発見したという4つの「木星の月(衛星)」の1つ「エウロパ(Europa)」。この映画は冒頭に「この映画はヨーロッパ(Europa)のお話しですよ」と宣言しているのです。
映画は「神」や「罰」を「人類最大の発明」と言います。 そして、難民やテロなどの不安定なヨーロッパ情勢を描写し、空を飛ぶ“奇跡”を見せます。
この映画が描こうとしているのは「神の不在」なんじゃないかと思うのです。
イングマール・ベルイマンが『第七の封印』を撮ったのが1957年。フェリーニが『甘い生活』で撤去される(空飛ぶ)キリスト像を描いたのが1960年。それから半世紀、いやもう60年近くを経てなお、ヨーロッパ人(キリスト教圏)にとって「神の不在」は大きなテーマであり、むしろ今の方が事態は深刻化しているのかもしれません。 あるいは、泥沼の現状を打開するには“奇跡”しかないという、すがるような心境なのかもしれません。
SF仕立てという触れ込みの映画で(サイエンス・フィクションと呼ぶには荒唐無稽ではありますが)、考えてみればアーサー・C・クラークに代表されるように、SFと「神」は相性がいいんですね。 私はアイザック・アシモフの『夜来たる』を思い出しましたよ。太陽が6つある話でしたけどね。「夜が来ない」惑星に日食で2千年ぶりの「夜」が来る。それはもう“奇跡”と“神”について考えざるを得ない設定なわけです。
そういう意味では、この映画も“奇跡”と“神”について考えなきゃいけない設定ではあると思います。荒唐無稽だけど(<しつこい)。
だけどやっぱり肌感覚で分からないんですよ、「神」や「罪」が。 ほら、日本人って「お天道様(太陽)が見てる」とか「ばちが当たる」文化だから。神だって日本には八百万いるそうだしね。そういや、天岩戸に天照大神が立てこもったって話も「日食」だって説があるよね。
皮膚感覚で理解できないから、映画の中のどこにも自分がいない。「スゲー撮影してんな」とか思いながら、ただ事態を見守るだけ。そういう映画だったんですよね、残念ながら。
(18.01.28 ヒューマントラストシネマ渋谷にて鑑賞)
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