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[コメント] 少女ファニーと運命の旅(2016/仏=ベルギー)

樹枝に跨って手紙を読むさまからして好感を抱かずにおれないレオニー・スーショーは、老若男女を問わず被写体が魅力的であるための顔面の二条件「笑顔が素敵であること」「(不機嫌や落胆などの)負の表情が目を惹くこと」を易々と満たし、背負わされた計り知れない不安と覚悟を実以て痛切に演じている。
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**ネタバレ注意**
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かつての幸福を偲ばせる「カメラ」といった小道具が具合よいなど細部の誂えも良好だが、何と云ってもスーショーに率いられてスイスを目指す子ら全員が(もちろん台詞量や目立ち方に差はあるものの)見事に描き分けられているのは立派だ。とりわけ「射殺してみろ!」と警察官に食って掛かる金髪の少年モーリス=イゴール・ヴァン・デッセルの勇敢というか自暴自棄というかが胸を締めつけるが、このような作中人物群の個性の尊重には、子役の質の高さ、キャスティング・ディレクターの目の確かさとともに、ローラ・ドワイヨンの演出家としての誠実が見て取れる。また、決死の逃避行にもかかわらず、そのさなかに球蹴り・紙幣拾い・水浴びといった「遊び」が不意に発生してしまう瞬間に途方もない感動がある。さらに云えば、ラストシーンにおけるような「疾走」は窮極の生存行動とでも呼ぶべき胸の張り裂けるアクションだが(ジグザグ走り!)、子らが子らであるがため、その画面上の像には遊びの風情が一抹避けがたく紛れ込んでくる。そこにどうしようもなく感動する。打ちのめされる。

 ところで、映画そのものとはまったく関係のない話になってしまいますが、役の大小によって区別を設けることをせず、子らを演じた全員のプロフィルをパンフレット・公式ウェブサイトに掲載した日本の配給会社の心意気も快く思います。

(評価:★4)

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