[コメント] ジュデックス(1963/仏=伊)
アイリスインで始まり、アイリスアウトで終わる。開巻は、銀行家の社長ファブローのバストショット。トラックバックしてその秘書も映しこむ。警告状−これまでの悪事を償わないと、明日の仮面舞踏会で死ぬ−というような文書。差出人がジュデックスだ。そこに探偵のコカンタンが都合よく登場する。この映画、全編に亘って、こういうご都合主義が溢れかえっているのだが、そこに目くじらを立ててはいけない映画だろう。
社長のファブローはコカンタンに娘−ヒロインのエディット・スコブを紹介するが、彼女は部屋の窓外を歩いている姿として登場する。このショットがいい。スコブはシングルマザーで娘がおり、その家庭教師メアリ−フランシーヌ・ベルジェもこのシーンで現れる。
序盤の一番の見せ場は、何と云っても仮面舞踏会のシーンでの、鳥の仮面の男の演出だ。オペラパンプスの足からティルトアップする登場ショット。こゝはゾクゾクする。死んだ白い鳩を持ってホールを歩いていく。ゲストたち皆が見る。鳩を生き返らせ、他にもハンカチやラペルの飾り布から白い鳩を出す。これをワンカット内でやるのだ。スコブのスカーフでも。奇術師か。そして冒頭の警告文の通り、ファブローはいきなり絶命する。
ファブローの遺体が運び込まれたのは墓地なのか、ウルトラシリーズの星人の基地みたいな場所なのだ。自動ドアがあり、その開閉の効果音なども星人の基地っぽい。こゝでファブローは蘇生するといういい加減な展開。このジュデックスのアジトの趣向をもう少し書いておくと、囚われているファブローの部屋には監視カメラがあり、ミラーのようになっている。また、部屋にはモニターがあり、離れた場所にいるジュデックスが手書き文字をモニターに送る、リモート会議システムのようなツールが設置されているのだ。
また、中盤になって、女優としてはヒロインのスコブ以上に、家庭教師メアリとして登場したフランシーヌ・ベルジェが活躍する、というのが本作の人を食ったところだろう。彼女には、スイムスーツのような黒いピチピチの衣装で邸に侵入したり、修道女(看護婦?)の姿になったりだとか、あるいは、上半身を振動させるダンスのシーンや、屋根を滑り落ち、雨樋にぶら下がるアクションといった見せ場がある。また、彼女の仮面をした際の顔アップの美しさが鮮烈なのだ。
さらに、終盤になって、なんとも唐突にシルヴァ・コシナが出現する。彼女はサーカスのスターで探偵コカンタンの友人。コカンタンは、偶然にも通りかかった彼女を呼び止めて助けを求める。すると、コシナは上着を脱いで、ムチムチボディのセクシー衣装(サーカスの衣装)になって、建物の壁を登って行き、フランシーヌ・ベルジェと対決する。
結局、コカンタンも、いやジュデックスでさえ大した働きをせずに、二人の脇役の女優にセクシーな見せ場を与え続けて収束を迎えたと私には思えるのだが、一言付け加えておくと、それでも全体のヒロイン、エディット・スコブは独特の神秘的なムードをたたえていて、その存在感は大きい。
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