[コメント] セデック・バレ 第一部 太陽旗(2011/台湾)
これが「反日映画」であるか否かと頭を巡らすことほど愚かなことはない。昔人の言葉にもある「偏見は楽しい、だが無知は楽しくない」との認識に従えば、ここから蒙を啓かれて台湾史の知識を得るのが鑑賞の価値そのものであるからだ。その知識が偏見に満ち満ちているかは二義的なことだろう。
たぶんに眉唾ものの描写はたしかに散見される。あまりに強すぎるセデックの戦士たちと、対する臆病で無能な日本兵士たちの姿はあきらかにディフォルメの効きすぎた戯画であるだろうし、もしくは勧善懲悪ドラマの常套的描写ともいえるだろう。たぶんどちらとも正しいのだ。
だから、ここから議論を始める必要はない。エンタメの泉から歴史認識の清水がほとばしるのを期待しても虚しい。これは、比較的友好的に日本に接する台湾にすら、こういったルサンチマンが沸き出でるなによりの証拠として観よう。それがたぶん一番正しい見方だ。
でも、「そんな見かたは片腹痛い」とエンタメ方面から見る方法も同様に正しいだろう。ただ、そうすれば「台湾の水戸黄門もの」くらいの思いっきり俗な見かたしかできず、鼻で笑うほかにすべはないはずだ。こういう物語が出てくる背景はせめて見たい。「隣国の日本批判はすべて噴飯物」という固定観念のあくどさは、「自虐史観」などよりずっと悪いことは、もう常識と思うべき時代をむかえている以上。
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