コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ポンペイ(2014/米=カナダ=独)

行こう行こう火の山へ! フニフニフニフニ、男と女の愛のもつれだよ。☆3.3点。
死ぬまでシネマ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ポンペイではまだ発掘調査が進行中であり、従来の学説も屡々書き直されているらしいから、映画もやりたい放題だ。

紀元79年のヴェスヴィオ山の噴火では、噴煙が高さ20kmの成層圏に到達、堆積物は20時間足らずで市街を埋め尽くし、ポンペイ市民1万5000人の内、2000人の命を奪ったと言われる。映画では巨大な火山弾が石造りの町並みを次々に破壊し、火災を引き起こしているが、実際にはこれは映画の誇張の様だ。火山からおよそ10kmのポンペイには火山灰や軽石が大量に降り注ぎ、その重みで建物は倒壊したらしい。ガスを多く含んだ火砕サージも発生し、住民は短い時間で死亡した。(ガスによる大量死というと、1986年にカメルーンで起きたニオス湖の湖水爆発による大惨事が思いだされる) ガスが高温であればショック死するが、更に高温であれば遺体は燃えてしまうだろう。その後に土石流堆積物が市街に到達し、家屋の中に流入して遺体を埋没させたと思われる。

映画冒頭に出てきた人形の像は、本来は堆積物の中に残された空洞に石膏を流し込み復元したもので、G31さんの仰る通り、火砕流に巻き込まれ破壊されたり燃え尽きた場合は作る事が出来ない。死者2000人は案外少ないかと思ったが、石膏像だけで1000体もあるともいうから、亡くなった人はもっと多いのではないだろうか。

映画では脱出しようと市民が押し寄せた港を巨大津波が襲い、更なる大惨事となる。東日本大震災の影響は間違いないが、小プリニウスの記録によれば大波が発生したのは事実らしい。しかし映画の様な状況では無かっただろう。噴火後すぐに脱出した多くの市民は助かり、屋内退避等で市街に残った者や、大プリニウス(博物学者にして艦隊司令)等の救出に向かった周辺民が被害に遭った。

火山噴火の特殊性故に遺跡だけでなく多数の人間の痕跡が現代に残された。紀元79年という時代にローマ帝国ではこんな暮らしをしていたのかという事にも、日本人としては驚愕せざるを得ない。ヴェスヴィオ山は紀元前73年にはスパルタカスが立て籠もった山らしいが、世界で最も危険な火山とも言われ、その後も432年・1631年・1906年・1944年等に噴火を繰り返し死者を出している。

日本人としては、天明の大飢饉の原因となった1783(天明3)年の浅間山噴火(死者466名)が思い起こされる。観音堂へ続く石段で発見された、2人の女性の遺体である。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。