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[コメント] ある過去の行方(2013/仏=伊=イラン)

役者としてはアーマド役のアリ・モッサファの子供たちと接する時の、大事に想っているなと感じさせる情感の篭もった演技が素晴らしかった。
わっこ

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ある一家の内に抱えた過去の秘密が明かされていくミステリードラマ。

離婚協議の手続きに来た元夫アーマドに娘リュシーの話した告白をきっかけに、元妻のマリー=アンヌと恋人のサミールの交際の裏に隠された過去の出来事が徐々に明かされていく展開。

過去のマリー=アンヌとサミールの不倫関係から起きた、サミールの妻の自殺未遂の真相が登場人物たちの会話から小出しに明かされてゆく構成は見事。

最初は単純にマリー=アンヌとサミールの不倫愛の末の悲劇の過ちと思っていた自殺未遂事件が、徐々にリュシーや不法労働者のナイマといった第三者の介入によって起こった出来事だと明らかになっても、なるほどと納得できる説得力がある。

また、自殺未遂の真相を探るだけでなく、マリー=アンヌとアーマドの娘リュシーやレア、サミールの息子フアッドの子供の目線から見た、両親の過去の出来事に対する持論というか感情をしっかり描いており、不安定な環境に置かれた子供たちの心理を蔑ろにしていなかったところも好感が持てる。

ただ、終盤で概ねのサミールの妻の自殺未遂の真相が明らかにされた後は、マリー=アンヌら妻子とサミール父子の今後の生活の行方とか、それまで中心的に関わっていたアーマドのフォローに回らずに、サミールが植物状態の自分の妻に香水を嗅がせて、意識を回復しないかと思いを馳せる様子をクライマックスに持ってきたのは今ひとつというか、せっかく、それまでサミールの妻を描かずにいたのに、急に人物として出した意図が分からない。

そのせいで、最後の結末も何かしこりが残るような印象になってしまった気がする。

役者としてはアーマド役のアリ・モッサファの子供たちと接する時の、大事に想っているんだなと感じさせる情感の篭もった演技が素晴らしかった。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)プロキオン14[*]

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