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[コメント] ダラス・バイヤーズクラブ(2013/米)

現代のカウボーイは銃ではなくドラッグを片手に闘うものらしい。束縛を嫌い自ら行動するロンのキャラには西部劇のヒーローからの影響も多分にあるだろう。「MUD」や「ペーパーボーイ」では胡散臭い訛りが鼻についたマシュー・マコノヒーだが、本作での演技は見事なもの。手持ち主体かつ被写界深度の浅さが目立つ画面ながらその即物的な存在感で観客を倦ませない。ぼかされた後景にも動きはあり手を抜いていない。
赤い戦車

惜しむらくは終盤、主人公が闘う人から受身に回っているように見えることで、それはマコノヒーの起こす具体的アクションを映画が捉えなくなったということでもある。これではただのダイジェストになっている。

例えば地裁で敗訴するシーン、訴えが却下され敵側の握手越しにマコノヒーが捉えられるのだが、ここで彼は片手を支えられてよろよろと立ち上がる。病人としては現実的な描写である。しかし、彼はこの映画の「主人公」、映画としてはFDAと闘う不屈のガンマンであらねばならないはずだ。このシーンでは敗訴と分かっても、差し出された手を制止して、よろけながらも自ら立ち上がり自らの歩みで前を向いて法廷を立ち去る・・・演出の「正しさ」などという話ではなく(映画の演出に正解などない。ただし「間違い」はある)、このような演出の方がより本作の主人公に「似合っている」と思うのだが。

(評価:★4)

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