原作はベストセラーということで読ませてもらいました。さすがにベストセラーというだけあって面白かった。戦争に対してあまり知識のない若者にとっては改めて事実を知ることができる。いかに日本国民が、特に飛行機乗りや特攻隊が、命をかけて戦ったか。日本人として知らないままでは済まされない当時の現実。原作が全てではないが、そのような考え方があったのも事実で、『風立ちぬ』なんかもありましたし、戦争の時代を生きた日本人の様が描かれた作品が多く、重く考えさせられました。（宮崎駿さんは批判してるみたいですが、決して戦争・特攻美化の作品ではない気がします）

そんな中、今回の映画のテーマにもなった宮部久蔵と松乃の恋。そして家族を想う気持ち。映画はここに重点をおいて作られてました。ちょくちょく原作と違って違和感もありましたが、目をつぶれば気にならない程度ですね。

ただ、この原作を映像化するにあたって私は前者のテーマを切っては行けないと思うんですよ。いかに日本国民は苦しんだのか。軍隊上層部は何をしていたのか。特攻で亡くなった人、空戦で亡くなった人はどんな想いでいたのか。この原作が全てではない、しかし一つの事実でもある。だったらその気持ちも忘れてはいけないはず。日本人としてしっかり知っておくべきだと思うのです。

そして宮部久蔵が唱えた「生きることの意味、生きることの価値」。これこそ大切なテーマだと思うのです。だから私は映画では宮部と井崎のやりとりが一番グッときました。「命を無駄にするな！生きる努力をしろ！」これが一番大切だと思うのです。

だから映画自体、多少の内容の甘さとかは目をつむりました。映像もよかったし、演技もよかったと思います。でもテーマだけはブレてはいけなかったと思います。泣ける映画にするのでもなく、今生きていること、生き抜く努力をすることを考え、噛みしめ、自然と涙が溢れてくるような作品にするべきだと思います。

原作を読んだからこその意見かもしれませんが、原作を読んだからこそ評価を低くしてしまいました。