[コメント] 新仁義なき戦い 組長の首(1975/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
小林稔侍を助け、山崎努との約束にこだわる菅原文太に、瞬間「筋と義を重んじる主人公」が帰ってきたのかと嬉しくなるのですが、それも束の間。話が進むにつれ、立身出世のことしか頭にない、非常に計算高いタイプの主人公だと判ってきます。しかもそのクセ行き当たりバッタリで、目的も判らずに山崎努について行ったクセに、先陣切って西村晃に威しかけたりする。正直、これはかなりの感情移入のしにくさです。ハッキリ言うとイヤな奴です。
しかも話が進むに連れイヤな奴度は更にグレードアップ。成田三樹夫が描いた絵だと知りつつ子分に薬を売らせ、結果三上寛を死に至らしめるという非道ぶり。そしてせっかく生き残った小林稔侍さえも、「明らかに死ぬ」ような場所に鉄砲玉として行かされ玉砕。ラストは自分だけが悲痛な顔しながら杯もらってめでたしめでたし。お前が死ね。ホントにねぇ、小林稔侍なんか刑務所でカマ掘られてた方がよっぽどマシだったって話ですよ。シリーズに勢いを取り戻すために奔放な主人公に設定したんでしょうけど、奔放ならいいってもんじゃない。
ストーリーもウケ狙いのためかあちこちで破綻気味で、カーアクションシーンなんて無理矢理入れた臭いがプンプン。だって「罠かも知れませんぜ」「行ってみるしかないでしょう」って行ったクセに、「しまった!罠じゃあ!戻れ戻れ!」ってあなた方はアホですか。2号さんと一緒にあんなに酷い目に遭った西村晃が、何故だか大事に文太を守っちゃってるのもイマイチ判らないし。
ただ一点、上記のように考えると三上寛の「小林旭に憧れる青年役」っていうのもかなりイヤらしいはずなんですが、「小林旭になれなかった青年が、ヤクザの世界でも小林旭(=シリーズ3〜5作目の武田旭)になれずに死んでいく」って考えると、これだけは切なくてちょっと燃えるなぁと思いました。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (1 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。