[コメント] キッスで殺せ(1955/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
その謎の正体がまた…,ぶっ飛んでしまうような奇想天外なものだったというラストも含めて。
まず,邦題がすばらしい。原題とは微妙にニュアンスが違っているが,言わんとするところは限りなく近い。原題の真意を損なわず,かつインパクトのあるこの邦題の付け方は実に巧い。
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以下,ディレクターズ・カット版の感想です。
ハードボイルドの探偵小説や映画って,カッコいいけどあまり明晰とは言い難い探偵が行き当たりばったりに捜査し,話がだらだらと展開したあげく,なぜか事件が解決されてしまう…という話が多いけど,この作品は別。
話に矛盾やおかしなところも結構あるが,主人公の私立探偵マイク・ハマー(ラルフ・ミーカー)がもつれた糸をひとつひとつ解きほぐしながら,ぐんぐん謎の核心に迫っていくところが何とも小気味よい。
冒頭でハマーが助けた謎の女性クリスティーナ(クロリス・リーチマン)は,彼の性格を分析したり,車の登録証から彼の名前を当てて見せたりとなかなかの洞察力を発揮してその後の展開に大いに期待を持たせるが,直後にあっけなく殺されてしまうし,ハマーの仲間でいい味を出している自動車修理屋のニック(ニック・パット)もいとも簡単に殺されてしまう。それなりに存在感のある登場人物が次々と簡単に舞台から退場していくという,こういう思い切りの良さも,スピーディーな話の展開に一役買っているように思える。
それにしても,「パンドラの函」などと思わせぶりに表現される謎の物質は,FBIの話に「マンハッタン計画」などと出てくるところを見ても,核物質であることは確かなようだが,皮のカバーに包まれたあんな小さな鉛か何かの箱に入れられただけで外に放射線が漏れないというのは,どう見てもおかしい。空気に触れると燃焼するだけだが,何か他の物質と反応すると瞬時に爆発するような新たな(?)核物質だったということなのだろうか?
それにハマーは,この箱を発見したときに一度開けて火傷を負っているが,この中身が核物質であったのなら,その際被爆してしまっていることになる。それ以降ピンピンして捜査を続けることなどできないはずだし(^_^;),ラストでヴェルタ(マクセン・クーパー)と助かったとしても,死ぬのは時間の問題ではないだろうか?
また,ラストでハマーとヴェルダが燃えている別荘から海岸に脱出したところで映画は終わるが,箱の中が核物質だったのなら,別荘が燃える程度で済むはずはなく,海岸一帯が吹き飛ぶほどの大爆発になって,どっちみち助からないのではないだろうか?
黒幕だった医師ソバリン(アルバート・デッカー)をはじめ,謎の男たちも,そんな物騒な核物質を手に入れて,どうするつもりだったのか謎。彼らの組織がどんなものだったのかもわからないし。彼らが007の宿敵スペクターのような(リアリティに欠ける)国際的な犯罪組織だったのなら別だが,あの医師にしても,どう見てもFBIや国家を敵に回して何か企むほどの組織に関わっているようには見えなかったのだが…。
なお余談ですが,マイク・ハマーが「私立探偵濱マイク」の元ネタというのは今や有名だけど,『ダーティ・ハリー』のパロディであるテレビドラマ『俺がハマーだ!』も,邦題タイトルの付け方は『探偵マイク・ハマー 俺が掟だ!』のパロディになっているんじゃないかと私は思っています。『俺がハマーだ!』の最終回も,原爆?の起爆装置を外そうとしたハマーが,最後に残り二本の導線のうち一本を切るところで間違えて,原爆を爆発させてしまうという衝撃(笑撃)のラストシーンでした。
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