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[コメント] グレイト・フラマリオン(1945/米)

本作の運命の女、メアリー・ベス・ヒューズも最強の悪女だ。もうその点だけでも、ポイントが高いが、要所で見事なカットを散りばめた、良く出来た映画。メキシコシティで始まり、回想でピッツバーグ、ロス、シカゴなどを繋ぎ、最後にメキシコシティに戻る。
ゑぎ

 ファーストカットは、劇場ロビーから観客席のドアを抜け、舞台上の演者、レスター・アレンまで、ゆっくりと移動するカット。いきなりの銃声と悲鳴。梯子を登るエリッヒ・フォン・シュトロハイム。劇場の天井の梁に潜む。高低を意識させる画面。と、このオープニングも抜群なのだ。

 シュトロハイムは射撃の名手。舞台の射撃ショーの第一人者という設定。その助手夫婦がダン・デュリエとベス・ヒューズだ。助手の手に持ったグラスを撃ったり、服をかすめて撃って肩のストラップがハラリと落ちたり、といったことを繰り返す芸だが、この舞台芸自体も、けっこう面白い。この芸の中でも、手鏡を使ったり、大きな鏡の周囲に付いている電球を撃たりと、鏡が使われるのだが、他にも、楽屋のドレッサー(鏡台)や、シカゴのホテルの鏡など、全編通じて、鏡が活用されている。

 そして、プロットは、堅物のシュトロハイムがベス・ヒューズの色仕掛けに翻弄され、ついには、デュリエ殺害を企てるようになる、といったお定まりの展開なのだが、シュトロハイムの、のぼせ上りぶりが実にいい。ベス・ヒューズをホテルで待つシーンでは、一人でダンスをする。あるいは、殺害決行前に、後頭部を剃るシーンがあるのだが、頭頂部はセンター分けで、まるで亀頭のように見える、というカットがある。

 後半、ベス・ヒューズは、別の芸人と姿をくらまし、シュトロハイムは彼女を捜し求めて、全米を転々とする。金も尽き、落ちぶれ果てたシュトロハイムが、メキシコシティの舞台でベス・ヒューズを見留めるシーンも凄い。二人のアップを繋ぐカット割り、シュトロハイムの憎悪の表情が強烈だ。という訳で、ベス・ヒューズのちょっと童顔の美貌と癇性の描写もタマラナイが、彼女が最強レベルの悪女だと思わせられるのは、運命を変えられた側、シュトロハイムの造型、その見事さの反映なのだ。

(評価:★4)

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