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[コメント] 天地明察(2012/日)

この映画を見ている時、ノーベル賞を取った山中教授のことを考えていた。算哲が情報も何もない時代に生き、天体の動きから暦を考察していく過程は現代の研究者と似通っている、と、、。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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研究者においてはけれど研究に没頭できる環境と時間が必要である。山中教授が言っているように、失敗の繰り返しから突然その成果が生まれるのだ。まさに映画でも表現は多少違えど、たゆまない努力と大失敗、そして研究成果・自信が描写されている。

しかし何といっても環境がすべてを支配するのであろう。いわゆるスポンサーである。算哲は藩主の命を受けただ研究に没頭しているだけでなく、影の実力者光圀に財政的にも政策的にも擦り寄っているのである。この辺りの描写は現実的である。

作品は夫婦愛で彩りをつけながら一人の研究者のある人生の結実を見せてくれる。しかし映像も演出も俳優陣の演技もすこぶるいいのに、何故かこの作品がやや感動に乏しいのは、我ら一般人から遠いところでの視点が潜伏しているからだろう。

我ら庶民が研究者算哲に共感できるのは卑近な例では彼の恋愛感情であるが、半年帰路が遅れただけで嫁いで行ってしまう女性にまず何か肩透かしを食う。そしてしばらくしてタイミング良くその女性が離縁して算哲に再会する。当時の婚姻事情から、また女性の優秀さからするとちょいと都合が良すぎる気もする。

クライマックスの櫓を立てた暦合戦も、当時の武士が民衆を下に置いて高みの場所で腹切りを試みるなどとんでもない話で少々興ざめする。

まあこういうところが滝田監督のまだ若いところなのだが、全体的には2時間を超える長尺でも十分見応えのある作品となっている。滝田の実力を見せつける作品である。映画料金的には損はない。

(評価:★3)

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