[コメント] 君を想って海をゆく(2009/仏)
たとえば『クローバーフィールド HAKAISHA』でもそうであったように、そこにどれほどの危険や困難が待ち構えていようと、またそれゆえにもっともらしさが失われてしまおうと、「あの娘に逢いにゆく」は物語に「移動」を導入することにかけて「家に帰る」と並んで強力な映画的モティヴェイションだ。
怯えや戸惑い、あるいはささやかな喜びなどを浮かべたフィラ・エヴェルディの表情がことごとく感動的だ。しかしここではとりわけ次の点に触れておきたい。エヴェルディとヴァンサン・ランドンはお互いにとって母語ではない「英語」で会話を行う。ときに、そして「映画」においては特に、非母語話者特有の不慣れな発音は流暢なそれ以上に美しい。エヴェルディは英国に渡ったらマンチェスター・ユナイテッドに入団したいとランドンに夢を語る。さらには「あなたはマンUを知ってるか?」とも。その片言の英語によるピントのずれた質問はこのシーンに笑いさえ呼び込むかもしれない。だがラストシーンに至ったとき、その英語の響きがいかに美しかったかを私たちは思い知るだろう。
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