特殊効果が割と自然でよかった。 プロローグでオデットがロットバルトに呪われるシーン、実にうまくお姫様から白鳥にメタモルフォーゼしてたけど、ああいう効果を舞台でも使ってみたい演出家がいるんじゃないだろうか。 ただ、バレエって舞台芸術というより肉体芸だから、特殊効果で観客を酔わせるよりも、バレエダンサーが超絶技巧を披露した方がたぶん評価が高いのだろうな。 あと、ナタリー・ポートマンの背筋と頬のこけ方がリアル。 ただの痩せてる人になってなくてよかった。 しかし、いくら新演出新振り付けでも、背中にタトゥー入れたオネーチャンがスワンクイーンってのはないんじゃないかな、と思ったり。リリーちゃんがどんなにかっこよく踊っても、観客の視線は背中のタトゥーに釘づけになりそうだ。

この話の怖いところは、誰も本気でニナを追い詰めようとなんてしていないのに、ニナが勝手にドツボにはまっていくところなのかな。そういう映画は過去にもあったと思うけど、毒親のエリカさんから『キャリー』を想起させられる以外は、特に二番煎じな感じは受けなかった。 とはいえ、『エスター』でも感じたことだけど、日本の少女漫画にはありそうな話だ…。

生真面目なナタリー・ポートマンの性格が役に反映されているという評もあったけど、ヒット作の主役を張るような女優には絶対にないであろうウジウジネチネチした部分を演じている時はものすごく「あー、演技してるこの人−」と感じてしまいました。でもその演技が中途半端じゃないところが、高い評価を受ける所以なんだろうな。

ところでヴェロニカってなんのために存在していたんだろう。ライバル役はリリーで統一しておいてもよかったのでは…。