[コメント] SOMEWHERE(2010/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
『ロスト・イン・トランスレーション』のソフィア・コッポラが復活した。
私にも年頃の娘がいまして、こんな父娘関係に憧れます。
イタリアに二人で授賞式に出るなど、ボロボロに疲れてカフェに行って、店のおじさんが「一曲歌いましょうか?」と聞いてきて、父が「彼の歌、最高なんだぜ。」と娘に言う。これがめちゃくちゃ下手なんですね。でもそんな下手な歌聞いて娘が父親の肩でまどろむシーンがいいんです。
たまらなくいい。
憧れます。
父親は大スターでモテモテ。
娘は別れた妻がある日突然送り込んできたんです。まだ11歳。
二人でバカンスに出掛けて、プールで泳いだり、ビーチで昼寝したり。
そんな二人を青い空と白い雲が見下ろしている。
自然体。
そして父が娘をキャンプに送り出す。その移動の車の中で娘は泣きながら告白する。ママはいつ帰るのか?パパはいつも忙しい。娘の孤独。どんなに楽しい一瞬があっても、安定した家庭の暖かさが子供には必要なんだ。
平凡な日常。
誰もが求める日常。
スターである父親の非日常と娘と過ごす自然体の日常とのギャップ。
失われた日常は元に戻らない。
忙しい毎日を過ごす父親が娘と過ごす平凡な日常に接することで、
「自分は空っぽだ。何者でもない。」
と泣きながら別れた妻に告白する。
この後のプールで一人浮かぶシーンが素晴らしい。 画面の隅に彼(父親)の足元しか写らない。スターの彼もいずれ忘れ去られる存在であることを示す。
冒頭からずっと車のシーンが続く。
孤独
私も実感する孤独。
どんなに忙しくても、どんなに裕福でも満たされないものがある。心の空洞。
彼は最後ずっと大事にしてきた自分の愛車を荒野のハイウェイに乗り捨て、一人自分の足で歩いて行く。
一人で乗る車の孤独と娘が抱く親への愛情に対する孤独。
そんな孤独から解き放たれようとする。
全てが美しい。
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