[コメント] 冷たい熱帯魚(2010/日)
作品のナカは吐き気がするほど最悪、ただし作品のデキは言うまでも無いほどに最高。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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『ちゃんと伝える』のようなどこにでもありそうな何気ない日常の画面で起こる『ヒーローショー』にも出てきた主人公たちをどこまでも追いかけて来る「生」の化け物。そこに登場する狂気の殺戮者は『ダークナイト』の色気を纏ったヒース・レジャーでも『キックアス』の愛らしいクロエ・グレース・モレッツでも無く、ひたすらにそこらへんにいそうなオヤジでんでんなのである。
社会的にも男的にも力の無い夫、いかにも安そうな外見の再婚の妻、視野の狭い世界でのみ生きている娘、どこにでもいそうなへらへら顔のオヤジ、露骨にわけのありそうな女、実話を基に作られた本作はそんな日常的なキャラクターばかり。彼ら彼女らはきっと今もこの日本のどこかにいて、その「生」の化け物の大小で事件となったり報道されたり人の話題にされたりするのだ。そう思うだけですでに気味が悪い。
この映画自体のみを見るとスプラッター描写が多くまたエロがあってなんちゃらとなるのかもしれないが、映画全体の本質とはもっと大きくもっと身近な「不穏」なのである。そんな毎日毎日テレビで伝え流れていた「不穏」をいつの間にか日常化させてしまっていた私たちこそ、すっかり「生」の化け物に喰われてしまっているのではないかと見終わって身震いした。
そういった恐怖の連続で劇中何度も吐き気がした。今回もまた園子温のメッセージは強すぎる。次の動向が気になる日本の数少ない素晴らしい表現者だと思う。
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