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[コメント] [リミット](2010/スペイン)

物理的に動けないワンシチュエーションという状況設定は上手いと思うが、いまいち乗り切れなかった。本作においては「なぜそういう状況に置くのか」という疑問に対して加害者視点で納得できる答えを用意しないのは不誠実である。
Master

**ネタバレ注意**
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本作のような閉じ込めワンシチュエーション型の作品では、加害者側が被害者をそういった状況に置く理由を観客に納得行く形で説明するか、その理由を一切説明せず「脱出」のみに興味を絞らせるかどちらかの策を取るべきである。前者は『SAW』、後者は『CUBE』を想起していただければ分かりやすいと思う。『SAW』では加害者側の論理を説明して、ゴードンとアダムがあの状況に置かれていることの理由を示している。逆に『CUBE』では加害者側の情報を一切提示せず、如何に死のトラップを潜り抜けて脱出するかと言う点に焦点を絞っている。両作ともこの点においては正しい戦略を取っていると思う。

しかし、本作はこの点において中途半端なのである。加害者側の情報は微妙に出し、また、そういったシチュエーションに置くことの説明は納得行くものではない。ビデオを撮影させてそれを交渉に使おうとする場合、被害者の状態を正確に管理できない状態にして「遠隔操作する」というのは明らかに非効率的である。撮影も上手くいくとは限らないし、チェックしてYouTubeにあげると言っても携帯の電源が切れてしまってはどうにもならなくなる。となるとそもそも生かしておく必要性がなくなってしまうではないか。第一、途中にでてくる「普通の拘束状態」にある女性との扱いの相違の根拠は何か。これらを「奴らは金のためならなんでもする」というテロ対策の専門家の台詞一言で片付けるのは乱暴である。

本作をより効果的にするには、やはり「拘束されるまでの状態」を映像で示す必要がある。アメリカでの家族会議やら現地での状況、拘束される直前の襲撃の様子も示さないと、本作においてはその非日常的な「生き埋め」と言う状態が説得力を持たない。半ばドキュメンタリー的なオチのつけ方は興味を引くものがあったが、そもそもの設定にストーリー上の説得力がない以上、そこに乗るのは難しい。創意工夫で映画的な世界を作る事が可能であることを示したと言う意味では画期的であることは首肯するが、その創意工夫がシナリオについてももう少し生かされていればと感じる出来であった。

(2010.11.07 横浜ブルク13)

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)TOMIMORI ガリガリ博士[*]

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