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[コメント] ベスト・キッド(2010/米)

やはりコーチ役にジャッキー・チェンを持ってきたことで、ストーリーの説得力と映画の華やかさが、ものすごく増している。ジェイデン・スミスをはじめとする子供達もイイ。尺は少々長いと思うが、泣きどころは多数。はげしくオススメ。
サイモン64

**ネタバレ注意**
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30年くらい前に「香港映画」と言うと、黄色っぽいフィルムの「いかにも粗悪品」といった雰囲気が漂っていた。確かにブルース・リーとか大スターはいたものの、B級の枠からは抜け出せなかったように感じている。ジャッキー・チェンはそんな香港映画を世界レベルまで押し上げた世界的な映画人である。

その彼が『ベスト・キッド』のポスターに出ていたときに、ほとんど成功を確信していたが、実際に映画を見てそのことを確認した。

こういっては失礼だが、オリジナルの『ベストキッド』は、ストーリー的にはその後にたくさんの模倣者を作った典型的な映画ではあるのだが、どうしてもB級C級の枠から抜け出せないような小ささがあった。今回コーチ役をジャッキー・チェンが演じることで、やはりストーリーの説得力がものすごく上がったし、映画の華やかさが全く違っている。

また、ウィル・スミスの次男ジェイデン・スミスは、まるで『シンプソンズ』に出てくるバート・シンプソンをリアライズしたような、活き活きとして可愛いキャラクターであり、このコンビ抜きでこの映画は成立しないと言える。ウィル・スミスの歌う "Just the two of us." に登場するのはジェイデン・スミスなのだろうか?

敵役の中国人少年もリック・ヤングを少年にして、さらに憎たらしくしたような憎々しさがあふれていて好演だし、ヒロインの中国人少女も表情が愛らしくてイイ。

当然ストーリーは見る前から完全にネタバレしており、大団円にどうやって持って行くかが腕の見せ所である。

ジェイデン・スミスの演技力も相まって、少年の成長譚としてはすばらしいできではあるが、ジャッキーや各登場人物のバックグラウンドや心境を丁寧に描きすぎて尺が長くなりすぎているきらいはある。その分は削ってもイイから、ワックスがけとペンキ塗りを削らないで欲しかったなと思うところではある。

あらゆる場所に泣きどころがちりばめられており、涙もろい人は大泣き確実である。

全てが丁寧かつ豪華に作られており、はげしくオススメである。

〜〜〜

と、言うのが表面的な感想だが、中国と世界について、二つの事を思った。一つは「世界の中で日本ってすっ飛ばされてるな」ってこと、もう一つは「米国が中国に押しつけようとしている倫理観」についてだ。

□「世界の中で日本ってすっ飛ばされてるな」の件

冒頭にも書いたが、香港映画はかつて日本の中ですら揶揄の対象になるような安っぽい映画の代名詞だった。しかし、ジャッキー・チェンという偉大な映画人の登場によってそれは世界レベルに向上したのだ。英語を使える彼らの強みは、難なく海外の俳優と競演できることだ。一方日本は日本語で映画を作り、日本人にしか理解できないような世界観で映画を作り続け、そしてそれで満足していた。日本国内で満足し続けたが為に、世界市場では大した地位が築けていないというのは、まるで今日の日本の世界での立ち位置の縮図みたいに見えて非常に残念だ。

これは本気でやらんとあきませんね。

□米国が中国に押しつけようとしている倫理観

この物語のあらすじは「いじめられっ子が努力していじめを跳ね返す」というものだが、もう一つ背景に隠れたあらすじは「正義の中国人の手を借りた米国人が、ずるい中国人をフェアプレイでやっつける」というものだ。中国パワーを驚異に感じている米国が「中国さん、世界の仲間入りをしたかったら、そろそろフェアトレードで行きませんか〜?手始めは為替の自由化と労働者の人権改善を...」みたいなことを暗に言ってるように見えてならないというのは、うがった見方だろうか?

いずれにせよ、日本があんまり重要視されてない気がしてならないね。

(評価:★5)

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