[コメント] オオカミの護符 里びとと山びとのあわいに(2008/日)
最初監督の生活圏から始まったので、規模の小さいドキュメンタリーなのかと少々落胆したのだが、その後関東農民に共通する信仰と風俗のありように展開されて行ったので、すっかり話にのめり込んでしまった。山岳信仰と参拝という日本人の伝統習俗を見る事が出来る機会は、現代では少ない。
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上映会で若い質問者が「狼信仰の神社の殆どとヤマトタケル信仰は結びついている。オオカミの眷属、焼き畑などタケルを想像させるモチーフが沢山あるのに、作品でヤマトタケルに触れなかったのはおかしい」と指摘した。制作者側が「確かにそれは事実だが、両者の結びつきが何時からのものだったのかはハッキリしない。生活に密着した信仰という点を考えて今回はそこは敢えて割愛した。今回取材した神社はみな神社本庁の管轄下にもなく…」と説明すると、「明治神宮も神社本庁の管轄ではない。その主張は納得出来ない。」と噛み付いた。
俺自身もヤマトタケル信仰とオオカミ信仰の結びつきに興味を感じない訳ではなかったが、この若い質問者の興奮振りを見ると「何でも<大きな物語>にしたがる人間」と「足もとをみつめようとする人間」がいるのだなぁとつくづく感じた。前者はしばしば厄介事を引き起こす。<大きな物語>に押し流されたものを見つけようというのが、このドキュメンタリーの主旨だという思うのにネ。(review冒頭の"作品規模"とは「大きさ」の意味合いが違いますので、ご注意。)
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(追補) 2012年2月19日にNHK教育で「ETV特集:見狼記〜幻想の獣王を探す」が放映された。ニホンオオカミの生存を信じる男たちとオオカミ信仰、それに3.11まで絡めて見応えがあった。視聴可能な方は是非併せてご覧下さい。
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