[コメント] 今度は愛妻家(2010/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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『野生の証明』で薬師丸ひろ子さんにお目にかかったのが1978年ですから、もう30年以上も過ぎたんですね。
角川映画の中心として活躍された頃からすると、今の彼女はとても地味な印象ですが、それでも母親役であったり、この映画のように妻の役であったり、年とともに時代とともに良作に恵まれているように思います。
彼女の俳優としてのスタイルをある意味変化させたのは『きらきらひかる』ではないでしょうか。そのとき共演したのが豊川悦司さんでしたね。今回の作品と比較すると、とてもクールでナイーブな二人の関係でした。
あれから15年、再び共演した二人の関係は濃密で、いかにもありそうな夫婦関係。
倦怠期を過ぎた空気のような存在にお互いがストレスを感じています。
長い人生の中で、他人同士が長く付き合うことって、なかなかストレスを感じるものなんですよね。
しかし、この映画の面白いところはそういう夫婦関係が後半に一転して別のお話になるところ。絶妙な演出でしたね。
実は妻が死んでいた、というところから、亡き妻に対する重いが吐露される後半にさしかかるあたりの展開は見事でした。
特に義理のお父さん(石橋蓮司さん)とのからみ。突然現れたおかまのおじさんが、実は妻の父だった。これなかなか驚きでした。
途中、別の女性(井川遥さん)とのやりとりも微妙な雰囲気が漂いますよね。夫(豊川悦司さん)が飲みに行こうと誘った女性との微妙なやりとり。観客は「おやっ?」と思います。
それが実は妻の亡霊におびえ、そして妻の亡霊を愛する夫のトラウマだったとは、このシーンではわかりません。
『ゴースト ニューヨークの幻』的な部分と、夫を立ち直らせようとする周囲のやりとりが実に絶妙で見事でした。
最近の行定勲監督の作品は、この後の『パレード』もそうですが、見ている側をだますようなお話が盛り込まれていて一貫しているように思います。
昨今の「悪」に関する映画の続出で、このような癒しを許される映画ってなかなか逆の刺激を感じますよね。
とてもいい映画だったと思います。
2011/02/10 自宅
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