[コメント] ヴァイオリンの音色(1909/米)
全てフルショット以上に引いた画面。歩道はロングショットだが、こゝで、人物の動きに合わせてパンニングがおこなわれる。あとは全部固定の定点的な描写で出来ている。また、各部屋の場面がスタジオにしつらえた舞台的な装置に見える中で、歩道のショットだけが、奥行きのある街頭ロケ撮影、しかもパンもあって、おゝと思わせる、良いアクセントになっている。
主な登場人物は、主人公の他に友人のアナーキスト、バイオリンの生徒で恋人でもある女性とそのメイド、及び女性の父親の5人だけだ(アナーキストの仲間たちや召使などのモブは多数出てくる)。ファーストカット、主人公の部屋の場面が約5分の長回しで、少々冗長に感じられるが、5人の主要人物を全員登場させて、それぞれにキャラと関係をセットアップする。こゝで、主人公と生徒の女性のイチャイチャを邪魔するメイドの動きが一つポイントになる。私は、メイドをカーテンで仕切った画面奥の部屋に追いやり、空間の相違を示すコメディに発展するという部分と、早くバイオリンの指導を始めるように促すメイドの動作がラストカットでも反復されるという物語映画への志向の部分に注目する。
後半は、アナーキストが爆弾を仕掛ける地下の部屋と、主人公のいる路上、及び恋人の女性が父親の前でバイオリンを練習する1階の部屋という3つのシーンをクロスカッティングに近い繋ぎで見せる(タイトルは女性が練習するバイオリンの音色が路上で聞こえる状況を指している)。さらに、導火線に火をつけられた爆弾の側に、主人公が縛られて転がされているという状況になる。こういったスリル醸成に関する演出は、まだまだ未成熟で、効果的とは云い難いが、しかし確かにグリフィスらしさの揺籃ではあると云えるだろう。
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