シリーズものでありながら、連作を通して世界観を決定づけるべき肝の部分が決定的に欠けている文字通りの駄作である。とってつけたような設定でありながら、裏社会で暗躍するダークヒーローとしての魅惑的な世界観を用意するまでは着想としての可能性をなんとか保ってきたが、2作目では展開の余地を残していた分、3作目にして、1作目の安直な世界観に逆戻りしてしまったところはなんとも情けない。また、どうして2作目で豊かな画作りに貢献した撮影クルーを、今回は起用しなかったのか。いろんな諸事情があるとしてもそこは死守すべきプロダクションであったはずだ。さらにはなぜにナタリア・ルダコーワなのか。決して演技が悪いとは思わないが、スクリーン向きの肢体は残念ながら持ち合わせていない。ベッソンが女子をキャスティングするといつもこうなる。何やらあらぬ思惑が支配していそうで匂う映画だ。ともかくこのシリーズはこのあたりで止めておくのが賢明だろう。その選択はベッソンよりもむしろステイサムに対して求めたい。ステイサムはまだまだ可能性のある才能豊かな俳優である。そうした才気を無駄に浪費させてはいけない。